どうやら僕は魔術師じゃないらしい。



どうやら私は魔術師じゃないらしい。



私の一族は代々魔術師として優秀な高位魔術師だった。
高位魔術師を輩出してきた数ある家のひとつであるレランス家。
私はそこに、次女として生まれた。
私には姉がいた。姉は若くして高位魔術師だった。
私も姉のように強くなろうと思った。
毎日毎日、魔術師としての訓練をしてみたけど、ちっとも成長しない。
やがて、私は気付いた。
もしかして私は魔術師ではないんじゃないかって。
絶望だった。
だって、私の周りの人はみんな期待してたんだから。
みんなの期待を裏切るなんて、辛かった。
それに私が私でなくなってしまうみたいだった。
けれどこれは事実なんだ。
受け入れるしかない。
私は両親と姉に話した。
3人とも怒ったり嘆いたりはしないで私の頭を撫でてくれた。
嬉しくて、涙が流れた。
重かった鎖が外れた気がして。
心に引っ掛かっていたなにかがとれた気がして。
もやもやしていた感情がなくなった気がして。

そして僕は、ある日自分が異能者だということに気が付いたんだ。きっかけは今でもよく覚えてる。ただ遠くの物を見ようと目を凝らしたら、それが見えたのだ。普通の人の肉眼では見えないくらい遠くにある物体が。それだけじゃない。テレビがフラッシュを続けてろくに見えなくなった。雨の水滴がはっきり目にうつされた。ガラスの破片がバラバラになるのだって、はっきり……。当時「私」だった僕は直感したのだ。魔術師じゃない。僕は能力者だったんだ……!



「嬢ちゃん、剣術を習う気はないかね?」

「え、私?なんで?」

「西南で戦争が始まったのは知っているだろう?いつこの中東に戦争の手が加わるかわからない物騒な時代に、やがてなってしまうだろう。だから自分で戦える力をつけないか?」

「……!私、力が欲しい!お願いします!」



私の目の前にふらっと現れた袴を着る白髪の老人の手を私は手にとった。
老人は男性。顔に無数の皺ができている。もう長く生きているであろう老人だ。
異能者では皺ができるまで長生きできる人はほんの僅か、ひとつまみ。だから彼は人間だと思う。
彼の声ははきはきとしていて男性らしく重い。背中はスラッとまっすぐ。立ち振舞いがすべてかっこよく、たくましい。

そして私は剣術を習うことになった。

これが僕が何歳の頃の話か、なんてどうでもよくって。重要なのは全部〈あいつ〉の策略だった、っていうことだ。

それから何年かして、私が10歳の時に両親が事故で死んだ。