モノクロ



もう夜明けか。
好きではない空の端に強く輝きをみせる太陽を眩しい、と若干どうでもいいことを思った。

リャク様の魔術により、ミント以外の全員が組織の建物にあるロビーに転移してきた。
リャク様からの指示は「報告はオレが全部やる。他は休んでいろ」ということだった。リャク様はサクラとリカと話をしながらロビーから立ち去る。オレはその言葉に甘えさせてもらって自室に向かった。

シングたちも何事か話したあと解散した。



これからこの組織はどうなってしまうのだろう。ボスの一人であるツバサは消え、ミントも死んだ。……そういえば2人とも諜報の人だ。2人――とくにツバサ――が欠けた諜報部はこのあとどうなってしまうのだろう。良い方向に転ぶとはとうてい思えない。



「……疲れた……」



階段の手すりを頼りに三階まで昇ったとき、知り合いに会った。
レイカだ。
右目を眼帯で覆い、染みがない白衣を着ている。研究部である証拠の腕章がついていて、重そうにいくつかの本を抱えていた。
レイカはオレを視界に止めると、笑みをゆっくりと浮かべて言った。



「おかえり」



眼帯をつけているから怖い人なんて印象は与えない。彼女の優しい雰囲気がオレは好きだった。レイカはすぐに仕事があるからごめんね、と言って去った。しかしなぜかオレはホッとして誰もいないのに微笑んだ。上手く笑えないから他の人からみたら表情は大して変わってないかもしれないけれど、胸が暖まるこの気持ちを隠すことはしない。
















「ツバサさんが死んだ……!?」

「嘘だろ」

「……そんな」

「っ……」



リカとサクラは夜明けの現在、仕事をしていた4人の部下に事実を伝えた。
金髪の髪に赤いリボンを絡めた清楚な容姿の少女、銀髪にサングラスが特徴的な青年、3人のなかで一番目付きが鋭い背丈が少女と同じ赤髪の少年。そしてブロンドにちかい金髪と優しくない碧眼、イヤホンをつける少年――ルイト。
三人組の少女はシドレ、青年はアイベルト――愛称はアイ――、少年はワイルト――愛称はワール――。この三人組はツバサの部下の中で最も彼を尊敬していて憧れていて、忠誠心が高い。それだけに、彼が死んだという事実を受け入れていなかった。こうして目の前に立つリカとサクラの言葉がまるで夢物語のようだった。もっとも、この3人にとっては最悪の悪夢だが。



「自殺らしい。目撃したのはリャク様とソラだ」

「嘘……。だってツバサさんは……!」

「あいつは不死だろ!?死ぬわけがない!!」



泣き崩れるシドレをアイが支え、ワールはリカとサクラに突っかかった。
リカは顔を俯かせたまま。サクラはワールから目を反らした。



「……自殺だから、甦るかどうかは誰にもわからないんだ」



サクラの声が、シドレの泣き声に混ざって震えた。