世界崩壊





「やつらのアジトは解っているんだが、それ以外はよく解っていない。」

「今確認している狩人は?」

「ゆうき、氷結電流能力者
クレー、異能不明
光也、召喚師風属性
ゆうり、植物操作能力
瑞希、封術師
明、鉄操作能力
カイト、異能不明」



指を折って名を挙げていったリャクはそれだけ言うと、目を伏せてため息をついた。



「まだボスの姿は見当たらない。
それにやつらには多重能力者もいる。いま挙げていった中でもまだ隠している奴がいるかもしれない。」

「なぜ多重能力者が……。多重能力者など、存在しないはずだろう?」



人形に魂を定着させたまま集会に参加しているウノがひとりごとのように呟いた。
それを聞いてリャクが少し眉間にシワを作って「それが過去にいた記録があるんだ……」と言った。



「っ!!??」

「これを話すには少し専門的になるのだが……、」

「いいから、私に聞かせてくれるかっ」

「細かいことは当時も生きていたツバサの方が詳しいと思うが。何千年か前に異能者組織や暴力組織、つまりマフィアと、国家、帝国などありとあらゆる巨大組織が争った時代があった。原因や詳細は今調べている。」



初めは裏組織同士の抗争だったが、その争いは凄まじくなった。それは千年以上も続き、世界を飲み込んですべてを喰らい尽くした。

残ったのは僅かな人間と異能者たち。
そして大幅に変型した地形。以前とはちがう世界のバランス。

なにもかもが真っ白の状態になった。

これが俗にいう世界崩壊=B

そこへ後に救世主とか言われたツバサがいろんな知識やらを吹き込んだ。オレはどうも納得できないが。ツバサが無条件でそんなことをするとは思えない。
そしてアナログ時代の生活を復興させ、現在の文化の基盤を造り上げた。それが進展して現在の世界になっている。



「おおまかだが、ここまではわかったか?」

「……だ、大体は」

「まあいい。多重能力者の出現と消失はこれよりさらに遡る」

「ものすごく昔の話なのだな……」



その頃は現在と似たような文化が成り立っていた。異能者は異能者であることを隠して生きていた時代だ。そしてその当時の異能者が、多重能力者というわけだ。多重能力者が存在したのは僅か約600年。


その終わりは強大な力をもった四人――正確には三人ともいわれている――が、異能封印を行ったからだそうだ。それは異能者全員の能力を封印するという大事だ。

それは成功し、ゆっくりゆっくりであるが、徐々に異能者は能力を封印されていった。

今オレたちが異能者である訳は、その後に起こる世界崩壊で世界のバランスが崩れて封印の半分が無効化されたからだ。



「だが封印は生きている。実際、オレたちに多重能力者がいないのが証拠だ」