甘えることはできない
拳銃に新しく弾を装填し、両手を拳銃でふさぐ。 ずっとここに居ても仕方がない。取り合えず移動しようと廊下を進むと、階段に出会した。ここから降りようかな、と思ったとき階段をかけあがる音がしていたことに気が付く。明の仲間か、と拳銃の安全装置を外していつでも発砲できるように戦闘体制をとった。
「……」
たったった ったったっ たったった
3人、か。 まさか3人もオレが相手するわけじゃないよね。
うち2人はラカールとチトセのところにまわそう、そうしよう。3人も多重能力者を相手にしてられない。記憶が戻らない今の状態では、とくに。
「はぁっ、はぁっ、うぇ〜、速いよ2人とも…っ」
「アンタはもっと体力作りをしなさいよ!私が付き合うから!」
「えー、雪奈ってばめっちゃハードじゃんかぁぁ」
「アンタがのろまなのよ!!」
「って、あ」
オレの前には明と雪奈、そして光也がいた。明と雪奈は会話に集中していて、一番最初にオレに気がついたのは光也だった。
「……その節はどうも」
二丁の拳銃を3人に向けた。明らかにオレのほうが足りないが、取り合えず光也と雪奈へ。なんか明って鈍臭そうで、後でもいいかな、と思ったのだ。 驚いたのか、なんなのかわからないけど3人はピタリと止まった。明に至っては一瞬悲しそうな表情をしたが、オレにとってそれはとくに気に止めるほどでもないことだった。
「ソラ…」
「っち」
「なんでここで待ち構えてんのよ…」
明は悲しそうに、光也は悔しそうに、雪奈は悔やむように言った。
「…ソラは、やっぱり敵なの?」
「なに甘いこと言ってんの?それとも寝惚けてる?眠いなら寝てきなよ」
「……だっ、て」
「最初から敵だよ」
はっきりと言うと、明はあらかさまに悲しそうな顔をした。 どれだけ温室育ちなんだ。これではすぐに死ぬ。たとえどれだけ力をもっていても、たとえどれだけ守る人が居ても、絶対に長生きできない。
「わかった、じゃあソラは敵なんだよね」
明は確かめるように言うと、殺気を露にしてその手に大鎌を現す。
「雪奈はあっちをよろしく。ソラは俺と明が倒すから」
「わかった、あんたたちも気を付けてね」
光也に従って雪奈はその場を駆け足で離れていって、ラカールとチトセがいる場所へ向かった。
減ったのは嬉しいんだけど、まだ2人も居る。 まあ、2人くらいはなんとかなるだろう。
雪奈に向いていた銃口を明へ向けて、引き金を引いた。
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