突撃の合図
屋敷の正面からはリャク様が堂々と中に入ることになった。裏門からはシングとミルミが。で、オレをふくめたリカ、サクラ、ラカールとチトセはそれぞれ窓から侵入することになった。敵を分散させるために、なるべく派手に侵入しろとリャク様にいわれている。
「……」
拳銃の調子や弾の確認をして、リャク様の合図を待つ。リャク様が正面の扉を魔術で派手にぶち破るらしい。それが突入の合図。
ちなみにオレは屋敷の屋根に登った。この三階の窓を蹴り破る予定。派手な能力を持っていないのだから仕方がない。
「あ、リャク様」
屋根だからか、全員の配置が見える。空弾を発砲するために弾倉を抜いて、配置を見る。
リャク様は歩いて正面玄関の前にたち、屋敷の一番奥左右にリカとサクラ、裏にはシングとミルミが武器を手にしている。ラカールとチトセはオレと同じく屋根いて、チトセが召喚術で武器を出しているところだった。 チトセは召喚術を使うんだろうな、なんて考えていたらリャク様が詠唱に入る。足元に陣が現れて、ゆっくりと廻る。 召喚のときに使う陣とは全く違う陣。
魔力が一帯をうずめき始める。
うちの組織で一番強いのってリャク様なんじゃないのか?いや、もう、組織じゃなくて世界で一番かも。 だって魔力を発動するだけでうずめく魔力の量が尋常ではない。
リカが言っていた。 リャク様は上級クラスの魔術を使わないらしい。使えないのではなく、使わない。わざと。 だから今使っている魔術が中級クラスの魔術だとすると、その威力は核爆弾に匹敵するか、さらに上。
わざと魔力をうずめかせていたリャク様は閉じていた目を開いた。
「……え?」
ザザザザ、とノイズみたいな音を出しながら扉は水に変換した…。扉はなくなり、扉だったものはいまや液体に。扉がもともと大きかったせいか、水の量は半端ない。しかもその水は迷いなく建物のなかに入って行った。
「は、」
「ソラ、入れ!」
「…了解」
チトセに言われて、はっとした。
チトセは陣からよくわからない生物を召喚して窓を割った。その生物は、狼みたいな感じだったが、眼は6個、尻尾は3つでそれぞれの先にはギラリと輝く刃物。あ、今気づいたけど6個3つって3の倍数だ。……って、どうでもいいか。
オレは片手に空弾の拳銃をもって、左手に持つはずの拳銃は一旦しまう。そして屋根をつかんで足で窓を蹴り破った。実際宙吊りだったが、遠心力でそれは一瞬に収まる。窓の破片と共に屋敷の床に着地してすぐ空弾の拳銃を発砲して、存在をアピール。
存在をアピールするオレって客観的にみてどうなんだろう…?
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