同時進行



「じゃあ今から始めるわよ。間ゆうり、山代瑞希、中神美紀は私についてきなさい」



ボスは重そうな着物を屋敷の廊下を引き摺りながら歩き出した。その後ろについていくのは指名された3人。

過去に帰るために大きな術を展開するのだ。

ツバサの横には雪奈がいた。そして不安げに言う。



「あれだけの人数で大丈夫なの?」

「4人だけで十分すぎるよ。明ねーちゃんは、力はあるけどコントロールできないし、光也にーちゃんは慎重すぎちゃうからね。まぁ、明ねーちゃんと光也にーちゃんが活躍するのはとぶ瞬間だし。」



4人の後ろ姿をしっかり見ながらツバサは微笑んだ。廊下にいるのはこの二人だけで、自然な流れで明たちがいる応接間に向けて足を動かした。



「そういえば、あんたは行かなくてもいいの?」

「俺はあとで。明ねーちゃんたちの顔をみたら行く。」

「……そっか」



ボスたちが術を展開してしまえば、それは明たちとの別れ。一生会えないと言ってもいい。なぜならこの時代では明たちはすでに故人なのだから…


























ミントのテレポートで着いた場所は山の中にある屋敷。幽霊が出そうな雰囲気がある。周りの木々に遮られ、空から降る光が届かなかった。
薄暗くて足元が不安定。



「あの屋敷だ。前回の地下はもう無いからな。ツバサを含めて11人が居る。」



サクラが腕を組みながら全体にいう。リカは頷きながらそれを聞いていてリャク様はただ屋敷を睨んでいた。



「……ミントは屋敷の周囲を歩き回っているカイトを頼む」

「はい」

「てかなんでそういう事がわかるの?」

「ツバサのデータにそれがあったんだ。ここの位置はリャク様が」



リカはオレを見上げて話す。オレはなるほど、と納得して屋敷を見た。視界にはリャク様とラカール、チトセが入り込んでいる。



「じゃ、ここは私に任せて、皆さんは先に行っててくださいっ」



ミントは笑ってガッツポーズをした。ぶっちゃけ頼れるのかあやしい。
けれどミントの上司であるリカとサクラはそれで十分であったらしく、「じゃあ任せたぞ」とリカが僅かに微笑む。

そうしてミントを置いて屋敷へ向かう。木々が途切れる少し前に立ち止まって、リャク様が振り返った。



「この任務は個々で行う。いいか、契約者以外はバラバラに動いて貰う。それは相手が多重能力者だからだ。力を分散させる。それに――――、いや、なんでもない」



リャク様はオレたちに向けていた顔をそらした。