開放





久しぶりに自由になった気がする両手。あちこち動かしていたらツバサは椅子に座ってのんきにあくびをしていた。



「てゆかツバサ、その杖どーしたの」

「思い出すだけでリャクをシメたくなるから聞かないで。」

「……。」



それだけいうとツバサはため息をついた。そしてどこからか紙とペンを取り出してさらさらと何かを書いた。



「何書いてんの?」

「はい。」

「……?」



書き終わった紙をオレに見せる。オレも椅子に座ってそれをみた。

うわ、綺麗な字。

そこに書いてあったのは、数字とアルファベット、記号の羅列。「なにこれ」と聞けばツバサは「逃げたらリカにこれ見せて。」と言った。



「見せたらどうなんの?」

「これはパソコンの暗証番号なんだけど、あ、パソコンっていっても指紋やら声紋やら諸々調べるから誰でも使えるわけじゃないからね。」

「厳重…」

「こっちは情報を提供して食べてるからね。それが丁度いいの。」

「へー。で、リカに見せたらどうなんの?」

「ここ、『黄金の血』のデータがわかるようになる。何人いて、誰がどの能力をもっているのか、武器はなんなのか。いろいろね。でも俺は明ねーちゃんたちが好きだから殺そうってことになれば君たちの敵側になる。」

「そのときは本当に裏切り」

「そういうこと。まあ、永いこと生きてるから今更裏切りに罪悪感なんてないけど。」



オレは渡された紙をポケットに入れると武器を取って装備する。
時間はまだある。



「ツバサ!!ソラを拷問してるって本当な……、あれ?」



ドアを勢いよく開けたのは明だ。てかさっき出ていったばっかじゃん。
ツバサはあちゃー、と額に手を当てて首を降った。



「明ねーちゃん、ドアの鍵閉まってなかった?」

「えっ?し、閉まってたよ。あ…。怒らないでねツバサ!緊急判決で鍵を開けろってトイレの神様が言ってたの!起こるなら神社に言って御輿に怒ってね」

「いろいろツッコミたいけどいいや。ドアの鍵閉めて」

「ツバサは優しいね」



明は内側から鍵を閉めた。
てかどこから突っ込めばいいのかわからないんだけど。

さっきも聞き流したけどツバサは明のことを「明ねーちゃん」と呼んでいた。二人はどんな関係なんだろう。



「てかソラ無事だったんだね!!よかったぁー。手も治ってるみたいだし。」



どんだけこの子は善人なんだ。
なんかあたたかい家庭で優しい両親の愛情のもと育てられた感じがする。