食堂の備品崩壊




あれから朝食までの間、ナナリーとリャク様のやりとりを見ていた。ナナリーがリャク様にものすごくなついていて、みているこっちは多少ながら面白い。

朝食の時間になったら医務室から出て食堂へ。ミルミからパンをもらって食べたせいか、ミントは食堂に行かないらしい。だから途中で別れた。シング、ミルミとオレの3人が食堂に着くと、ジンを発見。
シャトナ、レオと一緒に食べていた。

いや、正確には今食べ終わった感じだ。トレイを持って立ち上がっている。

ガラッとしていて人数が少ない食堂。だからか、シャトナがバッとこちらへ向いた。客観的に見れば、けっこう綺麗な振り返り方だ。長くてサラサラしてそうな髪が振り返ると同時に舞う。
髪の一本一本が光にキラキラと反射している。

だけど、オレの主観では残念なことに。
目がギラギラと輝き、今にもビームを放ちそう。長い髪はまるでメデューサの蛇。「ぐぇへへ」と笑っていそうな笑みにオレはひいた。

ポン、とシングの手が肩に置かれた。そしてオレにひとこと。



「ご愁傷さま」



反論しようと思った。その言葉に。
なにがご愁傷さま、だ。助けてよ、と。
それをいうまえに「ソラ!」と大声で呼ばれ、数多のハート飛ばされて、影が迫ってきた。床を這って。ときどきペロリと床をから剥がれて実体化する。なんだこれ。いろんな感情が沸き上がるが、奇妙だ、という感想が一瞬だけオレを支配した。

…異能を駆使してまでオレに触れようとしなくてもいい。



取り合えず、避ける。触手のように、ぐわっと襲いかかる―――実際には襲ってないのだけれど―――影を避ける避ける。



「なんで逃げるのよソラ!」

「普通にコミュニケーションとってよ、って危なっ!」



グチャッ!!と椅子が影に飲み込まれて潰れた。それを目の当たりにして、暫しの沈黙。他に食堂で朝食をとる人も沈黙。



「………」

「………」



沈黙は嫌いだ。気まずいことこの上ない。
物音ひとつしない沈黙は息苦しい。だから誰か喋ってほしい。自分が喋ると、なんだか空気が読めてない人みたいで嫌だ。わがままだけど。

でもこの中にちゃんと空気が読めない人がいた。いてくれた。空気が軽くなった。軽くなったってことは重かったのか。



「給料が減るぅぅぅぅ、ぐえっ」



シャトナだ。シャトナの横にいらっしゃるレオがシャトナの口を抑えた。というか「ぐえっ」って、色気ないな…。

ジンはトレイを置いて戻ってきたところで、「なんだこれ。」と床を這ったままの影を変な目で眺めていた。