協力体制





どうすれば元の世界に戻れるのか、ツバサが大まかな説明をしていた。

難しい説明はほとんどわからない明はただぼー、としているだけ。途中で疲れて、その場に座った。



「やっぱり、ツバサじゃない…」



ツバサを見ながら、声にならないほど小さな声で呟いた。どこか虚しく、切ない表情で。
すぐ隣にいた光也にも声は聞こえなかったのに、説明をしているツバサは明を一瞥した。



「なんだか大変そうね」



説明が終わり、美紀が何か考えるように腕を組んでいた。その視界には光也を写している。光也は「プレッシャーかけるなよ…」と冷や汗をかく。



「魔術師や召喚師ならかなりの魔力を使う。今から蓄積することをおすすめする。」

「りょーかい」

「貴方を信じるわ」



ツバサが告げ、光也が快く了承。ボスがツバサを信頼した。元の世界ならば敵同士であるはずの人物がこうして纏まるとは本人たちも思ってなかっただろう。

これで『黄金の血』は邪魔な組織を潰したり、強力な異能者を欲することをやめた。

だが、外部はその事を知らない。
現在、敵になっている『Saint Hurs』も外部だ。



「美紀たちは他の子たちにこの事を伝えてきて頂戴。私は場を用意するわ。」



協力的になったボスの機嫌は良好。返事をした四人はそれぞれ解散した。
ツバサも杖をついて歩みを進めていた。明は光也の腕をひっぱり、ツバサに近付く。



「ツバサツバサ!」

「何?どうしたの、明ねーちゃん。光也にーちゃんなんかひっぱって。」

「なんかって何だよ、なんかって。失礼な」



部屋からでて和風の廊下を立ち止まり、三人はその場にとどまる。明は数秒、押し黙ったがすぐに口を開いた。







「あなたは誰?」







笑っていない。
真剣な表情で明は言葉をうみだした。
腕を明にとられた光也も、
明をまっすぐ見るツバサも驚いた。


沈黙の空気が流れる。
それは数秒のことだった。
当人たちはきっとそれ以上に長く感じる時の流れ。



「………ふっ」



やっと流れた音は、ツバサが苦笑したときにもれた声だった。
続いて光也の間抜けた声。明はそれでも真剣だった。

そしてツバサは明の質問に対する答えを

短く

わかりやすく

簡潔に

ひとことで

吐く







「俺はニセモノだよ」







清々しいほどに