『黄金の血』の目的





「じゃあ、吐いて」

「いや、てかさ、なにこれ。」



『黄金の血』のボスが居座る部屋に呼び出されたツバサは杖を頼りに、立っていた。
置かれている座席に座りたくないのだ。

目の前には妖しいボスと、仁王立ちした美紀。隣には明と光也がいた。


彼らがいるその部屋は外部の光を一切許さない、黒い部屋。そこにろうそくで灯したゆらゆらと頼りない光がさしこまれ、なんとか完全な黒から免れている。

それだけではなく、部屋のあちこちには召喚陣と魔方陣が描かれていた。天井、壁、床……ありとあらゆる場所に。

なにか黒魔術的な儀式を行いそうだ。


ツバサがこの部屋の状況をボスと美紀に問い掛ける。



「いいじゃない」

「悪趣味なことで」

「それよりも、貴方がいた組織の内部を教えてもらえないかしら?」



ボスがのんびりとお茶を飲む。明と光也は「なんてマイペースな」と声を合わせて行った。明と光也の声音はそれぞれ呆れたものではなく、笑っていて楽しいものだった。



「俺らの組織を狙う理由は?」

「実力者が欲しいからよ。」

「なぜ?」

「……どうしてそんなことを今さら、」

「質問してるのは俺なんだけど」



ツバサは答えていく美紀に質問を浴びせる。美紀はツバサを一度睨んだ。ボスはツバサが持ち出したい本題を悟ると、クスクスと笑った。茶菓子を手に取り、食べるボスはこの部屋の雰囲気とも、話題とも結び付かない。
ツバサに負けない自由人だ。



「わかってるでしょ。私たちは元の世界に帰りたいだけよ。帰るためには私たちの力だけじゃ足りない」

「だから?」

「だからツバサの組織にいる実力者が欲しいのよ。ボスが実力者を欲している欲っていう意味もあるけど。」

「最優先は元の世界に帰ることだよね?」

「そうよ。こんなところでのんびりしてる暇はないの。やり残したことがたくさんある」

「美紀ってたまにボケるよね」

「はぁ?」

「俺を誰だと思ってんの。」



不敵に笑うツバサは何か自信がある様子だった。
明の手を握り、光也の手首を握ってある程度上に掲げたツバサは話の続きをした。



「明ねーちゃんたちも実力者ってこと、ボスも美紀も実力者ってこと、忘れてない?」



ツバサは手を離す。
明と光也は目を丸くしてツバサを見ていた。



「何か考えがあるのね」

「勿論」



ボスはコト、と湯飲みをテーブルに置きながらツバサを見上げた。