補佐込集会






「奴は多重能力者だ。」



はっきり言ったリャクの言葉を残して真っ黒な部屋はしぃんと鎮まった。

苦い表情をしていたリャクははぁ、とため息を吐く。リカとサクラは一度目を合わせた。



「……ご存知でしたか」



サクラが言った。
彼が"シナリオ"に侵されていることも知っているリャクならばツバサが多重能力者だということは勘づいていただろう。



「ツバサは一体どんな異能を?」

「全部はわからん…が、ほとんどの異能は持っているだろう。――――収集家[コレクター]に匹敵するほどな」



ナイトの問いにリカが答えた。「だてに永く生きておらんな」カノンがそっと呟いた。

ここで出てきた収集家[コレクター]、彼はその呼び名の通り、収集をしている。―――異能を。
世に存在する異能総てを欲しているのが収集家[コレクター]。異能者のなかではとても有名だ。彼は大抵の異能は収集したようなのだが、珍しい異能は収集していない。


カノンは召喚師であり、とても珍しい"死"属性を持ち合わせている。

リャクは属性開発によって得た唯一無二の"天"属性。ちまたの噂では神に匹敵する属性と云われている。

テアの能力、『死神』は彼女しか持っていない異能だ。

そしてツバサの『不死』。これもテアと同じく彼しか持っていない異能。


収集家[コレクター]本人の『収集』も彼しか持っていないものだ。そんな彼は能力者。だが使用する異能は魔術ばかり。―――彼を詳しく語るのは、まだ早い――――。



「で、この『黄金の血』の異能に対する相性を考えて奴らの対策を練る、と」



リャクが話を戻した。
基本的に異能者組織同士の抗争をする際、作戦を練るのは頭がきれるリャクと情報を握るツバサ、元軍人の知識をいかすウノとカノンで行われていた。

今回からツバサはいない。だからリカをいれたボス4人で行われる、はずだった。



「恐れながら私は作戦をたてるのには参加できません。ツバサがいなくなったことが関係していまして」



申し訳なさそうにリカは頭を垂らした。
情報は突然ボスの変更があって今は忙しない。それを察したウノが「わかった、リカも頑張れ」と了承。



「必要な情報がありましたら、連絡ください。」



リカはそういって頭を上げた。エテールは手を顎に当ててなにやら考え込んでいた。
ナナリーは「それでは集会は終わりですね」とリャクに耳打ちをして頷いた。