死期
ラカールとチトセ、レイカが仮眠室から退室した。リャク様がそう言ったのだ。最初はミルミも出るように言おうとしていたが止めたらしい。
「"呪い"の二人に伝えなければいけないことがある。」
脱いでいた上着を着ているところへリャク様の少年らしい声がかかる。急いで上着を着て、しっかり座った。
「二人とも、すでに死期が過ぎている。オリジナルには記憶を無くす前にも言っていたが…。」
死期が過ぎている。 ………って、一体どういうこと、なんだろう。
その疑問を口にすればリャク様の変わりに隣に立っているナナリーが答えてくれた。
「本当は死んでいるはずなんです。ソラなら4、5年前に。シングなら1年前に。」
「……えっと…、それは…、やっぱり"呪い"で?」
「そうだよ。ソラの"呪い"は私の持てる最高の封術を使って一時的に侵食をおさえている。シングならミルミとの"血の契約"で侵食を遅らせている。それが死んでいない原因なんだけど…」
「ザシュルンクはともかく、オリジナルは異常だ。………あいつの仕業かもしれんが…」
リャク様の最後らへんの言葉はうまく聞き取れなかった。
「二人とも、定期的にオレの所に来てくれ。"呪い"についてもっと調べたい」
「はい…」
「わかりました。」
オレたちがそう返事をする。ナナリーが優しく笑ってオレとシングの頭に手を乗せて撫でた。
「"呪い"は私たちが絶対に解除してみせるからね」
その言葉は嬉しいのだが、なんだか頭を撫でられていることが腑に落ちない。ナナリーの外見がオレやシングと同い年みたいだからなのかもしれない。
いつ死んでもおかしくない、それらしい事をツバサにも言われた気がする。この世界に来てから何度も感じた侵食。思い返せば胸の中は危機感で埋め尽くされていた。
「ところでオリジナル、多重能力者とはどんな感じだ?」
「……どんな、といわれましても、オレたちと大してかわりませんでしたよ。見た目もそうですけど、雰囲気だって特別何かがある感じではありませんでしたし…」
「そうか。」
腕を組んで何かを考えはじめたリャク様。その目は真剣、というよりも好奇心に駆られて輝いているように見えた。
「用事はそれだけだ。ご苦労さま」
シングとミルミを頭を下げてから部屋を出ていった。オレもそれに続いて部屋を出ていった。
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