爆弾類投下






「オレはブルネー島っていう島出身で、10歳の頃に島の住人を皆殺しにした。それだけ。」



おおまかに取り戻した記憶を語るとシングは頷いて話を聞いてくれる。ベッドで抱き合ってるバカップルやリャク様たちもオレの話を聞いているようで仮眠室は、しんとしていた。
前者のバカップルは純粋に抱きしめ合っているだけで別にいかがわしいことはしていない。文章にすると変なことしてるみたいだな…。

オレの視界の端でリャク様と補佐が顔を見合わせているところが目に入った。



「記憶が戻ったことは嬉しいが、その記憶ではあまり喜べないな…。」

「ところどころ穴が空いてるからはっきりした記憶じゃないけど。」



シングが肩をすくめた。ラカールとチトセが「あまりいい記憶とは言えないね…。」「その記憶か…。」とどんよりした空気を発生させていた。



「ソ、ソラ!元気だしてね?」

「別に落ち込んでないけど。」

「うぅ…」

「心配してくれてありがとう、レイカ」



オレとレイカがそうやって話をしている間にミルミの診察が終わり、オレの番が回ってきた。"呪い"が見えるように上の服を脱いで、と指示されたから脱いでリャク様の正面に座る。
こんなに近付くとリャク様の背がどれだけ小さいのかよくわかる。本人には言えないけど。あと、補佐の妙にキラキラした視線がリャク様にささっているところとか。



「やはり侵食が進んでいるな。」



"呪い"をみた第一声がそれ。
すっとリャク様の指が"呪い"の記号をなぞった。



「記憶喪失ではないかもしれない、と言っていたな。」

「あ、はい。」

「オリジナルは記憶喪失ではない。封術で記憶を封印しているだけだ。」



真顔で"呪い"から目を離さずにリャク様は見事に爆弾、というかミサイル?原爆?を投下してくれた。
よくそんなかわいい顔で原爆を投下してくれる。けっこう衝撃的。原爆による被害が大きい。



「……は、い?」

「だから記憶喪失になった人間と違うところは多々あるだろう。気にするな」



"呪い"の記号や文字を目で追いつつリャク様は言う。すると補佐が「その封術は私だよ」と再び危ないものを投下してくれた。



「補佐が?」

「補佐じゃなくてナナリーだよ。そう呼んで!これでも成人済みだからね!!」



なんだろう、爆弾類を投下するのが流行りなのだろうか。

補佐であるナナリーの容姿はどうみてもオレと同い年くらい。「成長期がなくてー」と笑うナナリー。それは冗談なのだろうか。