呼び戻し





生に対する執着
やらなければならないこと。

わかった気がする。
前より頭が重くなった。
記憶が、ある。全部じゃないけれど。思い出した、ブルネー島、そこで起こした事件を。あいつらに捕まるまでを。
きっとこの状況のなにかが記憶に繋がったのだろう。


「ソラをこんな風にしなくてもほかに違う方法で聞けないの!?」

「だからお前は甘い。守りたいものが守れないんだよ」

「……っ!!守りたいものがないカイトに言われたくない!!」



怒りを現していく明の背中を擦って宥めようとするゆうり。
なんで仲間割れをするんだろう、と思っていたら、そういえばクレーが仲が悪いって言っていたことを思い出した。



「お前は甘い。」

「うるさい!!大切なものを失う辛さなんか分からないくせに!!」

「明、落ち着け。」



カイトは無表情のまま明を見下ろしていた。
そこへ新たな人物が侵入してきた。



「カイト、美紀が呼んでたよ。」

「……。」



入ってきた人物の第一声はそれで、カイトは無言のまま部屋から出ていった。

声は女。足音が近付く。姿を現した。

橙色の髪が腰まである人。女子生徒の学生服を着ていて、肩にかけて持っているのは学生鞄。
手首にはリストバンドをつけている。



「雪奈」

「うるさいと思って来てみればまた仲間割れしてた、……って、あんた誰?血だらけじゃん。」



この人物は雪奈、というらしい。

雪奈はオレを見てから、止血をしている明に「ボスさんが呼んでたよ」とひとこと言った。

明は雪奈とオレを困ったように見比べる。



「大丈夫だから」



正直、いま一人になりたい。

明に言うと明は立ち上がって何回か振り返りながら部屋を出ていった。

雪奈はゆうりに「誰?」とオレを指差しながら聞く。ゆうりは「ソラ」と短く答えた。



「ソラ…。ああ、"呪い"だったわね。美紀が言ってた。」

「で、雪奈は何の用で来たんだよ。カイトと明を追い出してまでしてよ。」

「カイトは邪魔だから、明は刺激が強すぎるからちょっと退室してもらったの。」



雪奈はそういうとドアに向かって歩いていき、誰かを呼ぶ。すると廊下からパチンと携帯かなにかを閉じる音がして、足音に混ざって無機物の音がした。



「誰呼んだんだ」



雪奈が呼んだ人物よりも早く部屋に戻ってくると、少し口を三日月の形にした。



「ツバサ」