逃亡、逃亡、逃亡







「はい、着きました!」



一瞬の浮遊感が終わると、着いた場所は少し懐かしいロビーだ。
ミントはオレと手を繋いだまま手を振った。広いロビーに立っていたのはリカと片目を髪で隠す青年。
そしてもう一方には少女、というか女性というか、女性寄りの人と、髪が肩まで届きそうな…。あれ男!?女にみえた…女性?のほうは影が揺れていて、もう片方はときどき一部が透明になったりしている。第一印象は「なにあれ」だ。



「あ、ソラ」

「ソラぁーっ!」

「ゔっ」



女性の方がダッシュして前に飛びながらオレに抱きついた。

オレはなんとか踏みとどまり、彼女を支えるとその後ろから走ってくる少年が視界に入った。

隣にいたミントはいつの間にかリカたちの所へいってなにか話をして、すぐにテレポートして消えた。
なんだか身代わりにされた気分だ。



「ソラおかえり!服が汚いけど、怪我はない?大丈夫?」

「怪我があるかもしれない人に抱き着くなよ」



少年はやや呆れ気味に言った。すると女性は頬を膨らませて少年を睨んだ。少年は涼しい顔でそれを無視。

なんだか懐かしい。
思い出すことが出来なくて少し悔しい。

そうしていると話が終わったのかミントとリカと青年が近寄ってきた。



「二人とも、ソラは記憶がないんだ。軽く自己紹介をしろ」



リカの声が右下からする。すると女性と少年は「あ」と声を合わせた。



「はいはい、私はシャトナ!こっちはレオね!!」

「自分で自分の自己紹介くらいできるって」

「結果は同じだからいいじゃない」

「……じゃあいっか」



女性はシャトナ、少年はレオ。それを頭で繰り返し、おぼえる。ああ、そういえばそんな気がする。
曖昧だが、そう思えた。
記憶を戻しつつあることがよくわかる。



「俺はサクラ。お前とはあまり関わらないと思うから覚えなくてもいい」



素っ気なく青年、サクラは無表情のまま言った。
本人がそんなことを言っても「言われればそうだ」とすぐにインプットされる。覚えなくてもいいと言われても、もう覚えてしまった。



「サクラもツバサの補佐だったが、今は私の補佐だ。」



悲しそうにリカが虚しく笑った。オレはそこでツバサに渡されたメモの事を思い出した。



「ツバサはもうこの組織にはいない。どこへ行ったのか…。」



ツバサが行方不明。
違う、ツバサは今『黄金の血』の所にいる。リカたちはそれをも掴んでいないのか。
オレはそう思って話しかけたがサクラに遮られた。



「もう寝る時間だろ。詳しいことは明日聞く。さっさと寝ろ」



シャトナとレオもそれに同意し、オレは強制的に部屋へ連行されることになった。