のんびりと
「さてと。そろそろ時間かな?」
長く話していた気がする。 明にはわからないように遠回しでツバサに少しだけ記憶が戻った事を伝えた。ツバサは「住んでいた場所までがんばって」と。
武器の最終確認。ツバサと逃亡ルートの確認をした。ここは地下に展開するアジトだから出口は限られている。 だが監視カメラが設置してあるわけではないらしい。とくに警備用の何かがあるわけではないようなので楽だろうと。
無用心ではないかと思った。
「美紀とカイトは今夜俺たちの組織の偵察にいってる。まあ、外から見るだけみたいだけど。 ここが襲撃しようとしてるみたいだね」
まるで他人事のように涼しい顔でツバサは言う。
「ゆうきとクレーは近くの町で任務中。1時には帰ってくるかな。ゆうりと雪奈、瑞希以外の3人は寝てる。」
そう言いながら机にうつ伏せで寝ている明に目をやったツバサは笑う。
「出口までは俺が付き添うから。」
「ん」
ドアを開けて廊下へ出る。ツバサはじっと俺を見ていて「あれ、引っ掛からない?」と聞いてきた。何のことだと目で訴える。ツバサは気付いてないならいいや。と俺の前を歩きだした。
?
なんだろ、引っ掛かる?なにが? ツバサの言っていた事を脳内で思い出す。とくに変わったことは言っていない、と思う。
「あ、ツバサじゃん。……と、ソラ?あんたまさか…」
偶然、遭遇したのは雪奈。私服だ。 ツバサを咎めるか、オレを連れ戻そうとするか、とオレは緊張する。
だが続いた言葉にオレは間抜けてしまった。
「ソラを逃がすの?」
「そ。」
「ふーん。ま、頑張ってね。それより明はどこ?」
「ああ、明ねーちゃんなら…」
ん? それだけ?捕まえていた獲物を簡単に逃がしていいわけ?
ツバサと雪奈は少し会話をしてから別れた。ツバサはそれが普通だといわんばかりに再び歩き出す。
「え、ねえ、あれでいいの?てかオレ逃がしていいの?」
「逃がしちゃだめだよ」
「じゃあなんで…」
ツバサはオレの方を向いた。後ろ向きで歩いていることになる。
「誰かから聞いてない?てか感じなかった?」
「なにを」
「あー、やっぱソラはサポート側は向いてないね。戦闘員でよかった。」
「聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。『黄金の血』は内部で仲が悪いって知ってる?」
「うん。クレーが言ってた。」
「ソラは学校に行くべきだ。」
「頭悪いって言ってますよね?」
「遠回しにね。」
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