雪合戦!
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ドォンと、響く爆発音。
それは大砲が破裂した音。
…ではなく、爆発を免れたミラクル☆雪玉シューターが勢いよく雪を噴いた音だった。
どうやら引き金をひいてから雪玉が飛び出すまでにタイムラグがあったようだ。
そんなこんなで勢いよく飛び出した雪玉は、そのまま直進。
片山田に向かってまっしぐら。


「ヤマダ!誠司!避けろ当たるぞ!」
「賢吾さん片山さん避けろ!!」
「逃げますよ片山さん!」
「馬鹿野郎てめぇら!まだスタート言ってねぇじゃねぇか!」
「そんなこといってる場合じゃないですってば!!」


山田が間一髪、片山さんを引っ張って。
なんとかギリギリ避けた先、弾丸じみたスピードで飛んできた雪玉は見事、置き去りにされたスピーディー☆雪玉製造機に直撃した。


「スピーディー☆雪玉製造機ィィイイイ!!!!」
「名前長い長い。」


ゴウンゴウンと故障音を立てて、掃除機に似た機体のホース部分をくねらせるスピーディー☆雪玉製造機。
本体部分はぐるぐる動き回り、くねるホースはのたうち回る蛇のよう。
その動きがまるで、痛みを表現しているようで、、。


「……………なんというか、」
「あぁ。ハタから見ると気持ち悪ィな。」


ぼそッと感想を述べる楓香たちである。
そしてその言葉が放たれたと同時、
スピーディー☆雪玉製造機はボンッと軽い爆発を起こした。
機体からあがる黒煙が、怒りを露にしているようで、、。
ガガガガガガガガガガガ、
小刻みに揺れ始めた機体につられて、ホースが左右に大きく揺れる。



「スピーディー☆雪玉製造機が怒った…ッ!?」
「いやそんな訳ないでしょう、壊れてるだけですから。早く回収して下さい」
「いや今手を出したらスピーディー☆雪玉製造機の逆鱗に触れて大逆襲が」
「ありませんから、機械ですからふざけてないで早く回収して下さい」
「……ッたく、つれねぇなぁ」


山田に軽く突き放されて、片山さんはトボトボとスピーディー☆雪玉製造機に近付く。
未だに小刻みに揺れているそれの前に、よっこいしょっと腰をおろして。



「さァて、どこが悪いンだー…?」


スピーディー☆雪玉製造機の機体に、
軽くタッチ。

ピ――――――――――――――――――ッ


「「は?」」


その場の四人の声が重なる。
そして次の瞬間。
ピタっと動きを止めたスピーディー☆雪玉製造機がぐいんと体を動かして、スイッチ起動。
標的、目の前片山誠司。
直後勢いよく雪玉が、連射される。
片山さんめがけて。


ドガガガガガガガガガガガガガ
「うぉぉぉおおおぉおおおぉ」
「片山さん!?」
「えちょ、片山さん!?」
「誠司!!」


凄い数の雪玉を受けて、片山さんは雪まみれ。
スピーディー☆雪玉製造機の機嫌が直った時には、片山さんの体は半分雪に埋もれてたりした。
当のスピーディー☆雪玉製造機は、ふしゅんと不可解な音を立てて大人しくなっていたり。


「ぶぇーくしゅんッーあ"ーちくしょうッ!!」
「え、何今のくしゃみですか?」
「誠司、まるでオッサンだ」
「馬鹿野郎王子、片山さんはオッサンだ」

胸の辺りまで雪に埋まった片山さんの前に三人で集まる。
とりあえずの応急措置で、ミラクル☆雪玉シューターとスピーディー☆雪玉製造機の主電源を落として。



「ホラ見ろ山田青年、スピーディー☆雪玉製造機の逆鱗に触れちまったじゃねぇか」
「そうですね。
これに懲りて危険な発明をしなくなってくれると有難いんですが」
「全くだ」
「…こうなったらすんげー発明してアッと言わせてやる…」
「何か?」
「いンやぁ?」


小声の呟きを聞き取った山田にシラを切った片山さんはふいっとそっぽを向く。
王子はそんな片山さんを見て口許を緩めた。


「………どした王子?」
「いや、誠司が雪だるまみたいだと思ってな」
「嗚呼、確かにそうですね」
「じゃあ片山さんが寂しくないように仲間作って帰るか」
「そうだな」
「賛成です」
「いやいや普通に助けろッての!」
「誠司、頭に勝利の旗を立ててやる」
「いらねぇよ!」


そんなこんなで。
作り上げられたお友達雪だるまと共に一時間ほど放置された片山氏は見事。
翌日風邪を引きました。





ぶぇーくしょん
バーロぃ!!



(そして次は故障しないよう)
(メカの再構築案を練り始める)
(片山誠司36歳であった)