雪合戦!
- - - - - - - - - -


「…………………で、?何で僕が道ずれなんですか?」
「ばっきゃろう山田青年!三人じゃ中途半端じゃねぇか!」
「すまん賢吾さん、アタシにゃ止めきれなかった」
「いや、佐倉さんのせいじゃないですよ」

さて、このアパートには路地に面した側とは逆側にちょっとした空き地があったりするのだが。
せいぜい20Mあるかないかのそのスペースで、今から雪合戦という名の遊びが始まろうとしていた。
山田という新たな被害者を巻き込んで。


「ルールは簡単!!俺&山田青年vs佐倉少女&王子青年の二チームバトル!
武器は俺と王子青年が持ってる『ミラクル☆雪玉シューター』のみ、あとは各自自由に雪玉を作って素手で投げろィ!
真ん中の旗を先に取って自分の陣地に立てた方が勝ちだ!
何か質問ある奴はいるかー?」
「ミラクル☆雪玉シューターは爆発しませんか?」
「する可能性は50%だ!」
「よし、使用却下だな。よこせ王子」
「何故だ、50%の確率で爆発しないんだぞ」
「二回に一回爆発すると思え」
「なら一度しか使わなければ問題ない」
「そういう問題じゃねぇンだよ」


既にスタンバイOK、がっちり大砲を構える王子を捕まえ、楓香王子チームは些細な内乱を始める。
ぐぐぐっと、楓香が王子の抱える大砲を強奪しようと試みるものの。
この王子、意外と力が強かったりする。
なかなか奪えない。


「ちょ、片山さんそれ何ですか」
「お、よくぞ気付いた山田青年!
これは『スピーディー☆雪玉製造機』だ!」
「早速反則じゃないですか。使っていい武器はミラクル☆雪玉シューターだけじゃなかったんですか」
「阿呆!スピーディー☆雪玉製造機は武器じゃねぇ!」
「そういう問題じゃないです」


一方逆側片山田チームも、なにやら武器をめぐって内乱中らしい。
地面に置かれた掃除機じみた機械を退場させるか否かで口論が勃発している様子だ。
こちらはミラクル☆雪玉シューターではなく、スピーディー☆雪玉製造機をめぐっての争いらしい。
スピーディー☆雪玉製造機を奪おうとする山田と、そうはさせまいとする片山の攻防戦だ。



「よこせコラ王子…ッ!」
「断ると言っている…ッ!」


大砲を掴んで引っ張りあい。
ぐぐぐっと引っ張って、互いの重心が僅かに後ろに傾く。
このままでは埒があかない。
そい判断した楓香は一か八か、容赦なく掴んでいた大砲を放してみた。
すると案の定、王子はバランスを崩して後ろに倒れ込む。


「うぉ…ッ!?かちッ」
「ハハハざまァみやが……かちッ?」


それは極々小さな音で。
王子が尻餅をついた時の音に掻き消されてしまいそうな音量ではあったのだが。
楓香の本能が危機を悟る。
そして王子が抱える大砲から、シュー…という音が聞こえてきて。


「お、お前引き金ひいたな!?明らかに爆発しそうな雰囲気じゃねぇか馬鹿か!?」
「馬鹿とは何だ不可抗力だ!貴様が断りもなしに放すからだろうが!」
「とにかく投げ捨てろ馬鹿野郎ォォオ!!」


素晴らしい動作で王子から大砲を奪い取った楓香は、数M先をめがけてそれを投げた。
くるくると回転しながら、大砲は優雅に宙を舞って。
銃口が見据える先は、片山田。