ミックス | ナノ


▼ I want to get wet.




「……ソラ?」

「ほっといてあげて」



窓の外、広くあけた共用のベランダでソラは仕事をする時のコートを着て、雨にうたれるのも構わずに立っていた。
その目は雲で埋め尽くされた空をただ見ていて、睨んでいるようにも見える。

ソラの部屋を訪れた鈴芽は当の本人が居なく、廊下で立ち竦んでいるところにシャトナとレオの二人に遭遇した。
始め敵意を出していたシャトナは時間が進むに連れて落ち着き、今は鈴芽の隣にいる。そのシャトナの隣にはレオがいて、温かいココアを啜っていた。



「ソラって、空が嫌いじゃ…」

「そうよ。別に見れないわけじゃないんだから平気。」

「ソラは何しているんだ?あのままじゃ風邪ひくし、」

「濡れたい気分らしいわ。」

「濡れたい…?」

「あとは本人に聞いて。なんか私が喋っていい話題じゃない気がするの」



シャトナはレオの飲みかけのココアをとってレオと同じところに口をつけて飲んだ。レオは「あ」というだけで、とくに文句は言わない。
ココアをとられたせいか、ため息をついて鈴芽にヒントを出す。



「俺にはシャトナが居る、シャトナには俺が居る。シャトナは俺で、俺はシャトナ。つまり一心同体で、ひとりじゃない。」

「……」



そういえばこの二人は会うたび、絶対に一緒だな、と鈴芽と、起きていた意識だけの鈴見は呟いた。



『一心同体どころじゃねぇだろ。狂ってるくらいに依存してやがる』



鈴見は言った。

そんなことは知らないレオが続きを話す。



「俺たちは互いが居るけど、ソラは共有した記憶をもつ人がいない。感覚を共有できる人物がいなくて、一人なんだよ。寿命の終わりだってもう目の前だし、なんていうか…。うちの組織って正常に見えて狂ってる奴らばっかだからさ。みんな独りで。」

「…ひとり…」

「救われたいだなんて思ってないだろうな。ソラも、組織の皆も、俺もシャトナも。」



































ただ解きたいだけ。


詳しいことを話さず、その続きは言わないでシャトナとレオは、部屋に戻ってくるソラを迎えた。

鈴芽はただ、ソラが自分から話してくれる時を待っている


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