▼ Small existence
『不可視的空想論』の続きです。また勝手に緋里さまの小説と繋げました。謝ります。
「なるほど、そういう見方もあるね」
自分は把握できている。
制御と支配をする権利がない俺が言ってもその言葉は空っぽなのかも知れない。
(ごめんね、俺は君≠謔鞣qい)
「そういえば、暗号の解き方間違ってると思うよ」
「は?」
突然話を変えて、俺はイヨに目を向けずに続きを話す。
「情報売って儲かってるんだから、何重も答えを仕掛けてあるよ。ちなみに正解は依頼者の所に送ったメールと照らし合わせれば出てくる」
不満そうにしているイヨに来客用のソファに座ってもらう。
先ほど部下から届いていた『侵入者注意』の警告メールをみてため息をついた。イヨのことだ。補佐が駆け付けないうちにそれを落ち着かせて、パソコンの電源を落とす。
「せっかく来たんだし、お茶出すよ。まさか仕事場に来るなんてねー」
変な薬入れないから安心して、と付け加えると「入れるつもりだったのか!?」と拍子抜けた返事が返ってきた。書斎の隣にある小部屋でお茶を淹れて帰ってくるとイヨはソファを離れて棚を見上げていた。
「興味ある本でもあった?」
「いや…、物語を読むのが意外だ」
「俺は読んでないよ。補佐が読んでる。あと腐った部下」
イヨが座るソファの正面のテーブルにお茶をおいて、俺は点対称の位置に座る。イヨが座ったところで話を戻す。
「鈴芽くん、まあ、中の子もそうだけど、会ったことがないからこう言えるわけであって、会っているイヨやソラの意見を尊重したい。」
「……」
「俺だって会ったことがない人物をいきなり嫌いになったりしないんだからさ。」
「じゃあなんであんな事を言うんだ」
「忠告だよ。年長者としての。」
「ツバサはモノを遠回しに言い過ぎだ。そのまま言ってみろ」
「それはパス。イヨにもあるでしょ?事情ってやつだよ」
(まだ話さないの?彼女、心配してない?)
「だが、私は鈴芽を信頼している」
「じゃあ今までの吐いた言葉は失言だ。取り消す。イヨが信頼する子をあまり悪く言いたくないし」
(なんとまあ…、美しい関係だね)
お茶を一口飲んでイヨは弩のように立ち上がった。俺は驚きはせず、むしろ面白がった瞳をイヨに向けた。
「苦い!」
「ごめん、俺好みなんだけど」
「……渋い」
「和菓子持って来ようか。ちょっと待ってて」
俺が再び小部屋に入っていく。戻って来るとイヨはソファに座ったまま部屋の奥に立て掛けてある古びた鏡を見つめていた。
好奇心旺盛だな、なんて思ってたらもちろん「あれはなんだ」と聞かれた。
「思い出の品」
「曇っていて役目を果たせていない」
「もともと曇ってる鏡なんだって」
「変人か」
持ってきた和菓子を食べながら口直しをしているイヨが可愛いな、なんて思っていたが窓から夜の闇がのぞいていたのが視界に留まる。
「もう暗い。うちにも空間転移能力をもってる子がいるからさ。送るよ」
「一人で帰れる」
「駄目。変な男に捕まるでしょ」
「そんなザコぐらい、倒せる」
「確かにイヨの実力は認めるけど。……このまま俺と一晩過ごすか、空間転移で帰るか、どっちか選んで。二択だよ」
「なん―――「もしもしミント?悪いけど彼女送ってくれない?」貴様っ」
選択すらしていないイヨは文句を言おうとするが、お別れのキス、ということで口を塞ぐ。
「伝言、鈴芽くんと中の子に謝っておいて。」
きっとその子たち癪にさわってるだろう。
丁度言い終わるとミントがやってきた。
━━━………‥‥・・
ツバサばっか喋ってる気がします、ごめんなさい
灰色の人はツバサと別人だと考えてくざさい