▼ Shame
「雨だ」
「雨だね。」
ツバサとイヨが本屋から出て帰ろうと思ったのだが、大きな窓を通して見える外は、昼間なのに暗い。
窓には水滴が吸い込まれるように次々とぶつかっていた。ゴロゴロと太鼓を叩くような大きな音、一瞬のフラッシュ。とても傘なしでは帰れない。
「すぐ止む。少し本屋で待っていようか。」
ツバサは買った本を片手に、もう一方の手でイヨの手を繋ぐ。優しく握るその手は冷たい。いや、イヨの手が熱かった。
ツバサは不信に思い、イヨの額と自分の額をくっつける。ツバサにとっては一秒くらいの時間であったが、イヨはそれを遥かに越えた感覚で、顔を紅潮させた。
つい声を張りそうになったがここが本屋だということを思い出してなんとか押し留まる。
顔を真っ赤にして睨むが、ツバサにとってそれは痛くも痒くもない。むしろ好印象だった。
「風邪じゃないみたいだけど、なんでそんなに手が熱いの?」
「なっ…、き、気にするな」
「じゃあいっか」
気にしない素振りを見せるが、ツバサは勘づいていた。
イヨが緊張していることに。
いつまでも初な反応を見せるイヨは可愛い、とツバサは音楽雑誌がある場所へ行く。
(どうせならもうちょっと羞恥を煽りたいな)
音楽雑誌を普通に手にとり、パラパラと涼しい顔で捲るツバサの横でイヨはとても気まずそうにキョロキョロしていた。
胸の中でツバサは笑う。
音楽雑誌の隣のコーナー。それは成人男性向けのアダルト雑誌があるコーナーだった。ツバサはそれに近いところで、気付かぬフリをして立ち読みをしている。イヨは気をまぎらわそうとするが、どうしても意識はそこへ。
「ツバサ、私は別の所に行って…」
「えー、俺寂しい」
こういう会話を何度も繰り返していた。イヨは気まずく、なぜか羞恥を感じていた。
しばらくそうしていると、雨が止んだことに気がつき、イヨはツバサに声をかける。
「あ、本当だ。じゃあ帰ろうか」
本屋から出て、ツバサはわざとあそこに居たのだと告白した。すぐにイヨが銃を乱射して大変なことになった。
「やんちゃだな…。天真爛漫というか、」
「黙れ黙れ黙れ黙れ!!私がどれだけ……!!」
銃弾を避けていたツバサは薄く笑みを張り付けていた。
「イヨちゃん、落ち着いて」
「黙れ、この死に損ないが!!」
「年長者の言うことは聞けって誰かに教わらなかった?――――俺が教えてあげようか」
ツバサが妖しく含み笑いをして、イヨに悪寒が走る。いつもとは違う、否、嫌なことを企んでいる笑みだった。それはつねにイヨが被害者で、彼はたのしくて。
意識を別のところへ飛ばしていたイヨは呼吸ができないことに気がついた。
ツバサの顔が近い
唇には―――――
━━━━………‥‥・・
本屋でいちゃいちゃするな!←