▼ Marriage
「オレたちが結婚したら鈴芽が嫁じゃない?」
「は?」
ゲームコーナーの中央部分に堂々と置かれているU.F.Oキャッチャー。機械類であるそのゲームを鈴芽に任せたソラはそれを横から覗き込んでいた。
そのケースの中に入っているのは可愛らしいぬいぐるみではなく、お菓子。大食いであるソラが食べたがったのだ。
世間でいえばこれはデート。男装はしているが、これでも異性同士のデートだ。
可愛らしさの欠片もない彼女の我が儘に付き合って鈴芽は次々にお菓子を獲得していった。
そろそろ止めたほうがいいんじゃないか、と鈴芽が思っていたとき、ソラが言った。本人は「もういいよ、ありがと」というつもりだったが、考えていたことがつい口から出てしまった。
「ソラ女だろ。」
「一応ね。これでも女っていう性別上、必要なモノはそろってるし。鈴芽だって知」「あーーー!!もうそろそろU.F.Oキャッチャー止めるぞ!」
ソラに先は言わせまいと鈴芽は獲得したお菓子を袋に詰めて、ソラの手を引っ張った。
ゲームコーナーから出てすぐ側にあるベンチまでやってきた二人はそこへ座った。
「なんでお前はあんなこと真顔で言えるんだよ…。慎め」
「配慮が足りませんでした、花嫁さん。」
「花嫁?」
「鈴芽の事。」
「さっきの嫁とか…、なんなんだよ?」
「ああー、鈴芽とオレが結婚したら鈴芽は嫁かなって。」
「なんでだよ」
「面倒見いいじゃん。いい嫁になれる。結婚生活が楽し……あ…」
何か懐かしそうな顔をしていたソラはふと何かに気が付いた。鈴芽がどうした?と聞くと、ソラは左腕を右手で触れた。
「結婚の前に、オレ死ぬかも。」
ズキンと、鈴芽の心臓に何かが突き刺さった。ソラの寿命を喰い荒らす"呪い"の存在。それが遠くに感じたそれが身近に感じた。
「死なない」
「鈴芽?」
「ソラは死なない。それに、死と隣り合わせなのは俺も同じだ。革命とかで、だけどな」
「………そうだね。オレと鈴芽は一緒だった」
めったに笑みを見せないソラがうっすら笑った。
「ていうか年齢的に俺ら結婚できね?」
「……あ」
━━━━━……‥‥・・
この二人、どこか抜けてるといい←