▼ What color do you like?
まだ成長期をむかえていない子どもが遊んでいる公園。そこだけ自然に満ち溢れていた。その公園の一角に設置されたベンチに座る女性が一人居た。
彼女はイヨ、人を待っている。
と、突然イヨの首に異物が触れる感覚がした。視界の端には手。誰かの腕がイヨの首にまわっているのだろう。
イヨは驚き、すぐに腕をつかんでベンチ越しにひねり上げた。ひねり上げたが、するりと掴んでいた腕がイヨの手をすり抜けてしまった。イヨは再び驚き、後ろを振り向く。
そこには金髪にメッシュにいれた青年が薄笑いを浮かべながら立っていた。
「さっすがー。戦ってる人は違うね。腕が抜かれるとこだった。痛い痛い」
「嘘つけ」
青年、ツバサは左腕をブラブラさせて痛覚を表現したがイヨには全く伝わらなかった。ツバサはまあいいや、と切り替えイヨの隣に座った。
「待たせたよね。はい」
「ああ、待った。」
「正直な事で」
ツバサは自動販売機で購入したばかりのコーヒー缶を右手に二つ持っていて、片方をイヨに差し出した。
イヨはそれを受け取り、開けてから一口飲んだ。
ツバサはそれを見てから前方で遊具を使って遊ぶ子どもたちを見た。
「わざわざ携帯から呼び出して一体何の用なんだ?」
「ちょっと聞きたいことがあってね」
ツバサは缶を開けずに両手で玩びながら言った。イヨはその手に目を向け、続きを待つ。
「イヨの好きな色が気になったんだけど」
直後、イヨがむせた。
それくらい電話でも聞けるだろう、とツッコミを入れたがツバサは知らん顔。
イヨは呆れたため息をついてから立ち上がった。
「帰る。」
「こらこら、待ってよ」
スタスタと歩くイヨに追いつき、ツバサはその肩を捕まえた。イヨの進行方向を変更させた。
めんどくさそうにツバサを見上げると「若い子はせっかちだな」と呟いていたところだった。
イヨは若いといえる年齢を過ぎていたはずだが、ツバサからしたらまだ若いのだろう。
「好きな色なんか、聞いてどうする」
「紫が好きって言ったら襲ってた」
「安心しろ。たった今その選択肢は消滅した」
「なんで紫か、気になる?」
「……まあ」
「紫って欲求不満とかいう意味なんだって」
そんなような事、聞いたことある気がするな。とぼんやり考えていたイヨはいまだに肩を抱くツバサの手をはがした。
しかしツバサは開いたその手でイヨと手を繋ぐ。何気ない動作にイヨは少し照れた。
俗にいう恋人繋ぎで、端からみればカップルに見える。実際にカップルなのだが、まだイヨは馴れていない。
「まあ、紫が好きじゃなくて白とか青とか橙って言っても襲うけど。」
「ちょっと待て。今どこに向かってるんだ!?」
一瞬前の甘い感覚が消え、次にやってきたのは危機感。ツバサはイヨを連れたまま人通りがない路地裏に入って行った。
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恋愛を意識して書いた結果がこれでした。