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▼ 感謝、感謝、感謝!





「……どうも」

「おう」



管理人(永倉)が用意した適当な空間。一見すればレトロなカフェテリア。誰もいないが。

ここに呼び出されたのはソラとルベル。世界観やら時間軸やらを越えてしまった。

真ん中のテーブルにルベルが座っていた。後から入ったソラはルベルの正面に座り、置いてあったココアに口をつけた。



(管理人から聞けば、この人は成人済み。しかも単細胞。見た目からして短気っぽい。てゆか不良じゃん)

(管理人はコイツ、女だっつってたけど…。どう見ても男だろ。若干美人寄りの。ガキっつうか、人生の辛さを知ってそうな面してんな…。なんか頭良さそう…。)



互いの第一印象はそれだ。
ちなみにルベルはソラを男だと思い込み、ソラはルベルをオジサンから金を集る不良だと思い込んでいる。



「とりあえず8000hitありがとうございます。」

「感謝だな。」



イメージカラーでいうならばソラはあお、ルベルはあか。真反対な二人が別々の表情で別々の場所を見て言った。

あまり表情を崩さないソラを見ながらルベルはなんとかして表情をかえたいと思ったのは五秒前。
ルベルの赤髪は地毛なのか、と自問自答をするソラが本人に聞いてみようと結論したのも五秒前。



「あの、」

「なあ、」



同時に言い、譲り合いでも開始するかと思いきや我先にとソラがそのまま続行した。



「その髪、染めたんですか」

「……なんで敬語なんだよ」

「一応歳上に対するマナーですけど」



ルベルと違って感情がこもっていないソラの眼がまっすぐ睨み付ける。ソラの態度はどうみても歳上に対するそれではない。
ルベルはとりあえずソラに敬語をやめるように言い、ソラは遠慮なく敬語をやめた。



「で、その真っ赤は染めたの?」

「そこまで赤じゃねぇだろ。地毛だ。悪ぃかよ」

「別に。悪いとは言ってないし。似合ってるからいいんじゃない?」



ソラがいうとルベルは目線をずらして「そうか…?」といった。ソラは照れているであろうルベルを見て、単細胞というか単純というか……。と何気なく思った。



「おぉ……っ!?」

「……っ、熱」



ルベルが手を滑らせて熱いコーヒーをこぼした。ちなみにソラの表情をかえるためにわざとした。ソラは少し眉を動かしただけでこれといって表情に変化はなかった。
ルベルは胸のなかで舌打ちをした。ソラがテーブルを拭く様子を、カップを片付けながらみていたルベルは、今度はわざと足を引っ掛からせてソラへたおれこんだ。

だが、ソラはそれを涼しい顔で避けた。ルベルはすぐに受け身をとってダメージを軽減させながらも転んだ。



「………。」

「わり、」

「……いいけど」



ソラの明らかに疑った眼差しを浴びながらルベルは再びカップを片付け、新しくコーヒーを淹れた。

一体どうすれば表情がかわるんだ、あいつは何がしたいんだろう、と互いがバラバラに考察をする。
だが二人とも頭が弱い。考えることは苦手中の苦手だ。だからすぐに考える事を忘れて雑談をした。ルベルは表情豊かに作り替え、ソラは笑いはしないもののそれなりに表情をつくりだしていた。

時は夕方に差し掛かり、そろそろ帰ろうかと二人が立ち上がった。



「俺、ソラのこと無表情キャラだと思ってたけど違ってんだな」

「オレもルベルのことヤンキーだと思ってたよ」



今では第一印象が覆り、気が合う点の多さに仲がよくなった。



「じゃあ俺は仕事あるし、行くな」

「またね、ルベル」

「おう!」



そう言って手を振り、二人は別れた。

出会うはずがない二人の出会いはきっと未来における休息になる。










































「まったく、オニーサンは何であんなに……、不器用というか、単細胞というか、バカというか……」

「強行突破はダメだろ…。ソラ」



ソラとルベルが居た場所から少し離れた壁の向こう側に二人は居た。
ヒーローにはヒロインが付き物だ。
熱血系ヒーローと乙女全開のヒロインではなく、冷酷ヒーローと保護者ヒロイン、単細胞ヒーローとマセヒロインの2ペア。

壁の向こう側にいるのはヒーロー側ではなく、ヒロイン側の二人。ルイトとサブラージだ。二人もソラとルベル同様にここに来ていたが、二人の会話が気になり、こうして耳を立てていた。

サブラージはルベルのバカっぷりに呆れて肩をすくめ、ルイトは保護者精神を全開にしていた。



「ルイト…」

「…何だ、サブラージ」

「お互い苦労するね…。」

「そうだな…」



この二人の仲間意識が高まり、変な同盟が生まれた話はまた後の機会に…。




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