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▼ 午前0時過ぎ×アンバランス

 


※「午前0時過ぎ」と緋里様の「アンバランス」とコラボです。誰得? 俺得
「午前0時過ぎ」の時間軸は深く考えないでください。





「きゃあ!」



そんな声が、ダンの家中に響いた。雪女と金神の口論はピタリと止まり、その様子にイライラしていたダンは更に苛立ちをみせた。悲鳴のあとに続いた落ちるような音は風呂場から聞こえる。ダンは窓から辻が入ったのだろうと思っていた。しかし、いざ風呂場を見てみると、そこにはまったく知らない赤の他人がいたのだ。
さくらとジャックだ。



「誰だ、お前ら」



ダンはポケットからメモ帳を取り出しながら空の浴槽に、狭そうに押し込められたさくらとジャックを睨んだ。まさか赤の他人に風呂に入られるとは思ってもみなかったダン。「あ、あの、その」と、苛立ちを隠さないダンにさくらが言葉を詰まらせていた。そんなさくらの代わりに、ジャックがダンの問いに答えた。



「諸事情で」

「……はあ?」

「おお、おお。これは珍しい」



ダンの後ろから金神が驚いた表情をして現れた。廊下へダンを押し出し、物珍しそうにさくらとジャックを眺める。ひととおり眺めたあと、ダンに一言「ただの迷い子だ」とだけ告げる。ジャックは金神を興味深そうに視界にいれ、さくらを置いて浴槽から出た。さくらも続いて出ようと手を縁にかけた。が、滑り、衝撃で誤って蛇口を開いてしまい、真冬なのに冷水を全身で浴びてしまったのだった。



「何をやってるんだ、サクラ」

「わ、わざとじゃないもん……っ」



寒くて体を震わすさくら。それを見ていた金神は笑い、ダンは仕方なくタオルを頭から被せてやった。金神の笑い声を聞いて、雪女が何事かと寄って来る。ダンは鼻を鳴らしてリビングに戻っていった。



「あらあらあらあら、始めまして!」

「へ? あ、あの」

「でも間違ってるわ。もしかして探偵さんのお客様? 探偵の事務所は隣よ?」

「た、探偵? あの、私たち、そうじゃなくて……」



笑顔で雪女は首をかしげた。さくらたちのいる理由はいまだに不明。雪女が隣で営んでいる探偵へ用事がある者だと判断した理由を述べてみた。



「違うの? だってそこの彼……、人間ではないでしょう? 分かるわ。私と同じ系統の妖怪だもの。隣の探偵は妖怪を相手にしているのよ? だから探偵に用事があると思ったのだけれど……」

「妖怪!? えっと、そうじゃなくて、これは不慮の事故といいますか……。信じて貰えるかわからないけど、私たち異世界から来たの。トリップ体質って言って、異世界を飛ぶ体質で」



しぶっていたさくらは、事情を説明し出した。途中でリビングに移動し、ソファに座る。ストーブがつかず相変わらず寒いが、風呂場よりは良かった。
さくらとジャックのトリップ体質の説明に対して返事は二通りだった。



「あら、不思議なこともなるのね」

「トリップ体質……そう名付けたのか」



雪女と金神はそう答えたが、真っ向からその体質を否定したのはダンだった。



「ありえんな。さっさと家から出ていけ。雪女と金神、お前らもだ」



素っ気ない態度。トゲのある口調。さくらはダンを誰かと似ている気がする、と思っていたがその性格の違いに気のせいだったかもしれないと、その考えを頭の中から放り出した。
雪女と金神はダンのことなど気にも止めず、さくらとジャックと互いに自己紹介を交わしていた。そのなかで雪女とジャックが似た系統であることが発覚すると喜んだ。



「さくらちゃん、ダンくんは素っ気ないしいつも怒ってるけど、あんまり気にしないでね」

「気にしろ。出てけっつってんだろ」

「あの、私たちいつまでもここにいるのは申し訳ないので出ていきます。お邪魔しましたっ!」

「ん? サクラ、もう行くのか?」



さくらはジャックの腕を引くと、急いで部屋から出ていこうとした。しかし、今日は、なぜかいつも以上にさくらには不幸ばかり降りかかってきたのだった。



「サクラ、危ない」

「っ!?」



ジャックがさくらの首根っこを引いた。さくらの眼前にあったドアが勢いよく開いたのだ。その勢いはたんこぶができる程度の早さではなく、ぶつかれば頭から血を流してしまうほど。タイミングが違っていれば怪我をするところだった。



「ダンー! 高蔵寺のお茶碗が割れたからババーって直してよ!」



新たな登場人物――吸血鬼の赤神とさくらの目が真っ先に交差する。赤神の真っ赤な瞳がさくらをうつしだし、そして予期せぬ他人にフリーズした。ダンは普段から自分以外の者を家に入れるのは拒んでいる。だというのに、これは一体どういう状況なのか赤神には想像しがたいことだった。割れた茶碗の入った巾着袋をカチャカチャ言わせながら両手が震える。



「なに、その子……っ」

「は?」

「ダンが……誘拐!? ちょ、ちょっと、あんた、それはさすがにまずいっしょ。ダンは真人間なんだからさ」

「……はあ?」



赤神はさくらの両肩に手を置き、真剣な表情をしながら視線だけがダンと彼女を往復した。ダンは心外だと言わんばかりに苛立っていた。
話の中心であるさくらはなにがなんだかわけがわからず、困り果てた表情をしたまま首を傾げた。その様子をジャックは楽しみ、あえて口出しせずにいる。



「あんた、うちにおいで。高蔵寺なら一人二人くらい増えたっていいでしょ。さあさあ!」

「えっ?」

「まだ早朝だよ? 家に帰るにしても寒いし、朝ごはん食べていきなよ」

「でも、そんな……、悪いです」

「いいよいいよ。うちには高蔵寺と高橋っていう世話焼きがいるんだから。まあ、ロルフや九条はあぶないかもしれないけど」

「?」

「さあさあ、おいでおいで!」



赤神はダンに割れた茶碗を押し付けると、さくらの手を引いて外へ歩き出した。雪女と金神もそのあとに続いた。ジャックは終始さくらの手助けなどには入らず、さくらは恨みを込めて彼を睨んだが、まったく威力はないのでジャックに口笛を吹かれてしまった。

   
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オチを考えずに書いていたのでオチがないです……

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