▼ 百花繚乱:Eve
始めて参加するということもあり、ソラを含めた一年生のクラスはなかなか球技大会の種目が決まらなかった。初めの一時間目で体育委員が一生懸命に球技大会について説明をして、次の時間を目一杯使ってクラス全員の種目を決定した。その日の放課後、ソラはルイトと寮への帰り道に互いに何に参加するかを話し合っていた。
「オレはドッチボールとソフトボール。オレの能力が使えそうなやつにしといた」
「確かにドッチボールもソフトボールも良眼能力が使えそうだな。俺もドッチは参加する。あとバレーだな」
「異能とか能力とか使ってもいい球技大会はオレ始めて」
「中学とかは規制かかるしなー。制御しきれないとかで。まあ、でも高校だってテンション上がりすぎて暴走するのもいるけどな」
「まじ?」
「ああ、まじまじ。俺らみたいな特化型能力者には関係ない話だけどなー。まあでもそんなに多くねえよ。多かったら学校壊れるって」
「うちの学校人数多いから、多くねえって言われても……」
「被害が拡大する前に、そういう意味で一番緊張してる教師が抑え込むし大丈夫だ。俺たち特化型能力者は被害を受ける側がもっぱらだけどな」
「なんで?」
「隣にいるやつが突然暴走する可能性があるんだぜ。笑えねえよ……」
「……あはははは」
ソラの棒読みの笑い声。ルイトはため息を付きながら首を振った。
「それもそうですが、球技大会は嫌なことばかりではありませんよ? 他の学校で見ることのできない面白い球技大会です」
唐突に、背後から声がしてソラは驚きのあまり声が出なかった。振り向いて後ろを見れば、そこにいたのは国語教師のアゲハだ。ルイトは良聴能力ですでに察していたようで、あまり驚いた素振りを見せない。
アゲハはにっこりと笑っている。
「せ、先生……。もう帰りですか? 今日は仕事のあがりが早いようで」
「球技大会が近くなると宿題や小テストもなくなるので仕事が早く終わるんですよ」
「お疲れ様です」
「ふふふ。普段なにしてるのか分からない教師とか、彼らの能力や異能を垣間見ることもできますしね」
「アゲハ先生とか?」
「はい?」
「何でもないです」
ソラは視線をそらした。
「しかし、本当に楽しみにしておいて損はありません。うちの球技大会は派手で楽しくて……。毎年予期しないことが起こるので、本当に」