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▼ Relation

人形の表情は変わらないもののウノの声はコロコロと笑った。日暗も話を弾ませてたくさん笑った。笑う度に細くなる瞳はウノの隣で静かにしているナイトに向けられた。じっと静かにしているものの、手の位置、足の置き方、雰囲気には隙がない。しかし一方のウノは人形。隙があるかどうか、どんな仕草をするかなど、解るわけがない。
日暗はあくまで警戒心を緩めることはなく話をし続ける。まだまだ信用における組織かどうかはわからない。わからないことが多く、謎に包まれた部分が多い組織の本部で安心することはできない。
しかし今回仕事についていったのは楽しかったな、とどこか細く笑っていた。



「そういえばその人形、手作りか?」

「おおっ! よくわかったな。そう、手作りだ。うちのかわいい部下が作ってくれたんだ。シングとミルミの幼馴染で女の子だ。私の昔の写真をみながら作ってくれた」

「へえー、手作りって感じがするし、うまいな。幼馴染っていうとー、だいたい二人と同じくらいの歳だよな。若いなあ」

「はははは。あなた方能力者からすればかなり若いだろうなあ。私もナイトも。この人形を作ってくれたラカールも。まるで一瞬の命だ。だが我々異能者は命が無能者よりの短いぶん、成長は早い。精神的な、そして異能の。だから若いのがちょうどいいんだ」

「俺がそんくらいの時なんてこんな職のこと……、そういえばウノさんていくつなんだ? 声からして若くはないだろうとは思うんだけど。でも異能者だしぜんぜん想像できねえ」

「はっはっは。私はもう90を過ぎたよ。90だといえばみんな疑ってかかるが、老いる肉体がないものでな。しかしそろそろ引退時ではないかと最近なやんでいるのだよ。老後の資金も貯まってきたしなあ。しかし能力者という長寿さんが目の前にいるんだからもうちょっと頑張ってみようかね」

「うえー、90でもそんななんだ。俺の周りなんて三ケタが多いんだぜ。こんなにも違うのか」

「三ケタ! ははは、まるで嘘のような話だ」



火を操り、水を操り、通常の人間ではありえない力を扱う異能者と能力者は客観的にみればまるで同じものであるのに話してみればそれはまったく別ものだ。似ているのは表面だけ。おなじものはなく、ただ、似ているだけ。いままで互いを詳しく知ることなく生きていたのだが言葉を交わすことで別の世界がみえてくるような、そんな気がしていた。

     

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