▼ Relation
シングは「日暗さんの能力がそこまで強いと今回の仕事は楽になりそうだな」と安堵した微笑を浮かべて言った。
「発火能力みたいですね。一般的なよくありげな能力でそこまで強いとウノ様のようです」
「いや、なんでも消し炭にする『業火』なんて一般的な能力ではないだろう。こちら側の能力者でもそんな人はいない。精々できる一般的な能力は発火だ」
「……そういえばそうでした」
間違えたことが恥ずかしかったのか、ミルミは目をそらした。居心地が悪そうに斜め下の床と見詰め合うミルミに苦笑をもらしてシングは日暗との会話を続けた。
「失礼、話がそれた」
「気にしてねえから大丈夫だ。で?」
「武器庫の中には見張りをしている一般人が数人。見ただろう?」
「ああ、気配からして三人だな」
「日暗さんにはメインの武器庫破壊をやってもらいたい」
「キャンプファイアか焚き火のように暖かく燃やしてほしい」と冗談混じりにシングが言うと、日暗は笑って「堅物っぽいシングくんも面白いことを言うんだな」と返す。
ちゅう、とミルミがジュースを飲み込む音で話はまた話題を辿る。
「俺とミルミが外で陽動をやる。貴方たち能力者は人の気配が遠くからでも感知できるみたいだから、中に人がいなくなったらドカンとかましてくれ」
「殺しちゃ駄目だもんな。いいぜ」
「快諾ありがとう」
シングはキッチリと浅く頭を下げて礼を言うと、「外に行こうか」と呼び掛けて店を出た。
店から出ると「そういえばさ」と日暗は白い息を吐き出しながらシングとミルミに言う。二人は一緒に顔をあげた。
「さっき言ってた『ウノ様』ってどんな人?」
「四人のボスのうちの一人です。ごく一般的などこにでもある、珍しくもない異能を持っています。『能力者を超えた能力者』とされていますよ。暗殺部のボスです」
「へえー」
暗殺部のボスと聞けば冷静沈着な人格であったり、鬼畜な人格など、恐ろしい面ばかりが連想された。
ミルミはこれ以上の情報はもらさなかった。シングも何も言わなかった。日暗は訓練されているな、と思う反面で平和そうに見えるこちら側でもはやり影があるらしいことを悟った。そもそも裏社会がある時点で影があるのは明白ではあるのだが、目の前にすると身近にそれを感じてしまう。
日暗自身にも影はあるが、それが自分に与える影響が多かれ少なかれ、影があるという事実に変わりはない。
「着いた。食後の運動だとでも思って働こう」
「よし! 革命開始!」
「それ違う」