ミックス | ナノ


▼ よくある非日常

現実が、アニメや漫画みたいな世界ではないと、どうやって証明ができるのだろうか。人類は地球のことをまだほとんど解っていないのだから。
神を見たと言っても、信じてくれるひとはこの日本国には少数なのでなないだろうか。夢見がちで現実を知らない幼い子ならだれでも信じてしまうかもしれない。
神とは、天使とは、悪魔とは、いったい何なのか。俺にはそれがわからないし、完璧に理解できる者はいないだろう。



「お前……、今……っ」



転校生。それは、アニメや漫画において重要なキャラクターだ。物語を左右するかもしれない。
しかし現実での転校生は、ただの転校生。家庭の事情で学校を移った生徒だ。

そうであるはずなのに。

あの浮世離れした少女は、今、夕暮れ時に、機械のようで、蛇のような動きをするモノを、ゲームでよく見たことにある片手剣で、斬った。その片手剣には、確かに水のような液体が重力に逆らってまとわりついていた……。



「今、何をしたんだよ!?」

「……」



彼女は黙ったまま。
もう一度聞こうとしたのだが、俺の背後から低いしっかりとした声が彼女を呼んだ。彼女は男に目だけを向ける。



「一般人に見られたのか?」

「……ごめんなさい。私のミスよ。彼は悪くないわ」

「けど、オレたちの活動は極秘任務だ。そのガキはただで返すことはできねえな」

「……」



体つきがガッチリとした30歳ちかくの男は、彼女から俺に視線を向ける。嫌な汗が背中をつたった。俺はこれから何をされるんだろうか。八つ裂きにされて、殺されて、見てはいけなかったものを見た人間をこの世から抹殺するのだろうか。誰も見ていなかったことにするのだろうか。
死んでしまうのだろうか。
まだ中学生なのに。
14年しか生きていないのに。

殺されてしまうのではないかという迫力と、平和ボケして生きてきた俺でも感じてしまうほどの殺気。純粋に、男は怖かった。



「やめて。彼、怯えてる……」

「おっと……すまねえ。でもどうするんだ?」

「彼を連れて、一度拠点に戻るしかないわ。秘密を知られたんだもの。
ねえ、あなたは神を信じる?」

「え?」

「私たち、神を殺してるの、って言ったら、あなたは夢物語だって言って笑うかしら?」



淡々と話す彼女の、少女の、転校生の、クラスメイトの声はまるで氷柱のようだった。





- ナノ -