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4月早々、いきなり補習ってどうなってんのこの学校。知り合いが多いからって入学したのが間違いだったかな。ねえ、どう思う?



「知るかよ!!」



勢いに任せてルイトはソラから届いたメールを画面に表示させたまま携帯電話を投げた。中庭は声が響き、耳が良いルイトは何分も自分の山彦のような声を聞いたあとにはっと我に帰った。せっかくの携帯電話が投げた勢いで壊れてしまったのではないか? と。投球がスポーツテストでそれなりに良い成績を残すルイトにとって、そもそも携帯電話が行方不明になってしまった。
どうみても自業自得なのだが腑に落ちないルイトは「ソラめ……。自分しか補習がないのに俺まで呼び出しやがって」と、この場所にいない人物の愚痴を呟きながら学生鞄を持ち上げて中庭を出た。



「……音からして、この辺に落ちてると思うんだけど……。おかしいな……」

「お。どうしたんだよルイト?」



見付からない、と花壇の中まで探しだしたルイトの背後からよく知った声がして振り返るとそこには体育の教師である紲那が片手で積み上げられたタワーのような紙束もって立っていた。足音が聞こえていて、誰かが近づいているのは聞こえていたためとくに驚いたりすることはなく、ルイトは少し言いにくそうに「携帯電話をなくしまして」とそれだけ言った。



「そりゃあ大変だなー……。よぉし、アゲハに頼まれた雑用を俺の代わりにやればきっと見付かるぜ!」

「……はあ?」

「まずはこの紙束をアゲハがいる職員室に持ってけ!」

「……先生、ちょっと携帯電話を貸してください」

「おう」

「……」



軽々と重そうな紙束をもっている紲那はポケットから自分の携帯電話を出すとルイトの差し出された手の上に置いた。ルイトは携帯電話で数秒操作し、少しだけ画面をみたまま待つ。

すると紲那のポケットからリズムのある洋楽が流れ出した。ルイトにとって聞き覚えがある音。黙ったままルイトは紲那を見た。紲那は目を逸らす。



「返せよ、俺の携帯電話」

「よおーし、じゃあ雑用は任せたぜ!」



ルイトの低くなった声を無視して紲那は素早く自分の携帯電話と紙束をルイトの手からすり替えると目にも止まらぬ速さでルイトの視界からいなくなった。
足音でどこに逃げたかはルイトにわかっていても無理矢理持たされた紙束が追いかけることを許してくれなかった。




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