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▼ World fusion


世界は半分に分かれているようなものだった。
国がいくつかあり、そのうち数か国が異能者と人間が共存する世界。もう一つが反発し、能力者が差別に遭ってしまう。そんな分かれた世界だ。
その分かれたうちの一つ、共存している国々のとある都市にあるそこでソラ・ヒーレントは間抜けたような声で上司であり自分の所属する組織のボスであるウノにもう一度聞き直した。



「革命組織?」



声が裏返ってしまいそうだった。

ソラの所属する組織の名は「Saint Hush」という裏社会の組織だ。一般には研究会社、インターネット会社ということになっているビルを本部にしている。この組織はボスが四人おり、ウノはそのうちの一人だった。四つはそれぞれ担当があり、暗殺、諜報、研究、傭兵に分かれている。研究会社とインターネット会社としてのカモフラージュは研究と諜報がそれぞれ行っている。
ウノは暗殺を担当しているボスでソラはその部下。暗殺は人数が少なく、この日、次の仕事について説明を受けにきたのはソラだけだった。

ウノのとなりにはボス補佐兼秘書の女性が静かに立っている。ソラは彼女に話しかける。



「ねえ、ナイト。革命組織ってなに?」

「あなたニュースとか新聞見てる?」

「ああ、あれね。頭が痛くなるから見てない。革命組織ってなんなの? クーデター? ストライキ集団?」

「違うわ。そんなものじゃないわよ。……ほら、遠い国では能力者の差別があることくらいは知ってるでしょ?」

「ああ、うん。……差別してるから革命しようってこと?」

「そういうこと。あくまでメディアの情報だけどね。その革命したいっていう能力者の集団が革命組織。今回は革命組織の敵にあたるその国の軍隊から依頼よ。司令部を守ってほしいんだって」

「オレじゃなくてナイトが行けばいいじゃん」

「私は私の仕事があるのよ!」



もともと釣り目である目がさらにつりあがり、ナイトは口をつぐんでしまった。ソラは「で」と話題をウノに振る。姿かたちがかわいらしい人形であるその姿から男性の低い声で笑い声がした。



「はっはっはっは。ではソラ、今回の仕事の説明をしよう」



ウノの楽しげな声で仕事の説明がなされた。



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「ではよろしく頼むよ」

「了解しました」



依頼者である軍の指揮官に頼まれ、ソラは一切表情を変えないままうなずいた。

ウノから説明を受けていくらか日にちをまたぎ、ソラは仕事場に立っていた。ソラと同じ仕事でこの司令塔である建物に入ったのは一人だけではなかった。ソラ以外にもルイト、シング、ミルミ、シドレ、ワール、アイもそろっていた。依頼者へのあいさつを終わらせるやいなや、ソラたちは控室に連れて行かれ、そこで待機することとなった。
そこでソラたちはシドレを中心に担当場所を決めることにした。



「アイですが、ご存じのとおり異能は千里眼になります。非戦闘員ですので戦線には立ちません。私たちの目的は依頼をこなしつつ、この依頼を利用して軍の情報をいただくことです」

「なるほどな。革命組織の襲撃に乗じて諜報活動をするということか。で、その要はアイであると……」

「はい、シングさんの言う通りです。アイにはここから離れていただきます。その時の途中までの護衛はシングさんとミルミさんに任せたいのですがよろしいですか? お二人はこの中で一番機動力をもっていますし」

「ああ、かまわん」

「私はマスターに従います」

「ありがとうございます。えっと、私は外で敵を待機します。というか、私の異能は屋内ではあまり発揮できないので。軍の方も革命組織に反発するでしょうし。情報そのものの回収は私、アイ、ワール、ルイトが担当しますのでソラさんたちは依頼をこなしてくだされば十分です」

「了解。がんばってね、ルイト」

「るせえ。俺よりソラのほうが心配なんだけどな」

「残念でした。キャリアはオレのほうが長いんですー」



ソラとルイトの会話にシドレは苦笑いをして、シングとミルミも彼らの会話に混ざりにいった、ちょうどそのときにウウーとサイレンが放送で鳴り響いた。
女性の声でそのサイレンの意味が放送で流される。どうやら襲撃を受けたらしい。



「ここの防御ってなんなんだよ。脆いだろ。兵を鍛えた方がいいと思うんだけどな」

「文句を言うな」



ワールの溜息もむなしくソラたちは武器を手に一人ひとりバラバラに分かれた。


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