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▼ 僕の愛し方



僕は彼女を愛している。


もともと僕と彼女は幼馴染みだった。彼女は幼い頃から身体が弱く、雨の日に傘をささないで歩けばその日のうちに高熱をだしてしまうほど弱かった。背も小さく、外にでないせいか肌は白かった。外に出ればその白は眩しくてつい僕は目を細くしたのだった。

幼稚園の頃、僕は彼女といるのが当たり前だった。
小学生の頃、僕は彼女を守ろうと誓った。
中学生の頃、僕は彼女が好きだったことに気付いた。
高校生の今、僕の彼女に対する愛は広く深くなるばかりだった。

クラスは違い、中学生に比べて僕は彼女と会う時間が少なくなった。僕は彼女と会えない間、今日の帰りは何を話そうか、ということばかりを考えて生きていた。僕は彼女を愛していたのだ。



「私、好きな人ができたの」



こんなにも僕は君を愛していると言うのに、どうして君は別の生物を見つめているの?
愛が伝わらないのかな?
僕はね、気づかなかっただけで幼稚園だったころから君を愛していたんだ。君のことならなんでも知ってるよ。君が僕に何度も言ってくれた「好き」は嘘だったっていうの? 僕をあんなにも舞い上がらせておいてそれはないよ。酷い。騙してたなんて。でもそんな君にも愛していると言うから僕は笑い物かな。まあ実際に笑ってる生物がいれば息の根を止めてやるけどね。僕は君がなにをしても許せるよ。この前僕の手を叩いただろ? あんな細い腕じゃあ痛くなかった。苦笑を浮かべたくらいだった。この前僕の背中をあやまって押してしまったよね。あれは危なかったなぁ。階段を降りてる最中だったしね。……ああ、そういえば昨日は拒絶されたっけ? 大丈夫。僕は平気だよ。それくらいじゃ僕の愛はなんともない。愛してるよ。僕だけを見てほしいんだ。君の言う「好きな人」が早く僕になればいいよね。僕は君をとっても愛しているから僕を愛せば幸せになるよ! だから他の生物なんて見る必要はないよ。



「――ァ」



枯れきった声にもなりえない声で僕を呼ぼうとする君の頭は何でいっぱいなんだろう。きっと僕だ! この真っ暗で僕と君しかいない部屋で僕の以外のことを考えるなんてありえないしね! 僕は幸せだよ。君とずっと一緒にいられるんだから。僕がずっとここで君を守ってあげるよ。愛してる。だからずっと君は僕だけを見ていればいい。他のモノは見ないで。君の「好きな人」は消してくるよ。君の宝石よりも美しく透明感のある瞳はあの生物を見るべきじゃない。君を汚い下心のあるメで見ていたんだ。あのメに君はうつるべきじゃない。あんな汚い生物を君は目で追うべきじゃない。
君の瞳は僕のものだ。
さあ、その2つの小さな宝を僕に頂戴?
取り出して僕が永久に美しく保たたせるから。
君を愛してる。
僕以外をみる瞳なんか君にいらないだろう?




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