▼ April
※ まずはじめに、ということで永倉のキャラだけ登場します。
「やーっとソラが入学か!」
ジンの明るい声が放課後の教室に響き、ソラは少しムッとした顔になった。
「悪かったね。オレが年下で」
肩につくほど伸びた黒髪をサイドの低い位置でまとめたソラの制服は明らかに男のもの。ソラの格好も男。だれがどうみても男なのだが実際は女だ。
高校に入学したてのこの春。まだ散ることのない強く咲き誇る桜が学校に何本も見られる頃。この前まで中学生だったソラがとある高校に入学した。
もともとソラと友達という関係を築いていたルイト、シング、ミルミ、ジン、レイカは同じ高校に通えることになったことを強く喜んだ。
ジンとレイカは三年生で、もうすぐ卒業してしまうものだが、残りの一年に満たない期間を楽しく過ごそうと考えている。
「それにしてもソラ、いきなり制服を着崩すなよ。この学校にはいろんな人がいるんだから……」
「カッターシャツだっけ? あれとネクタイって凄く苦しいんだよ。知ってる?」
「だからってブレザーの下を私服にするかよ」
ルイトはソラのブレザーをつかんで脱がしてみた。それでも男だと勘違いしてしまうほどソラの外見や声は中性的で、雰囲気は男だというものだった。
脱がされるときに抵抗を一切しなかったソラに、見ていたシングとミルミは周りに聞こえてしまう意味のない耳打ちをした。
「なあ、ソラ抵抗しなかったぞ」
「やはり慣れているということでしょうか」
「俺とミルミの予測は正しかったな」
「ええ、そうですね。ソラとルイトはやはり兄弟です」
「……なんでそうなるんだよ」
ルイトはソラにブレザーを着せながらシングたちの方を見た。ソラはブレザーのポケットに入れていたお菓子を食べ始め、関係ないとそっぽ向いている。
「も、もう下校時間だよ! 帰ろう?」
話題を必死で切り替えようとするレイカにジンが茶々をいれ、ソラはレイカに賛成した。
その下校途中、ソラは学校の話をたくさん聞いた。
いい先生、有名な生徒、注意すべき生徒など。
「は? 髪が緑?」
「お前からしたら髪が緑の先輩がいるな」
「なんで緑なの」
「知るか」
あまり知らない人に興味を持たないソラは「目立つ髪だね、それ」と進行方向を見つめた。