▼ Chocolate
ロビーで会った眼帯で茶髪の見知らぬ少女と銀髪のつり目で、明らかに眼帯の少女をいじめてそうな少年に「ソラなら談話室にいるぜ」と言われ、鈴芽は現在談話室に向かっていた。
今日はバレンタイン。チョコを異性に渡して想いを告げる日。
ソラがチョコを作るなど想像はできないが、ソラのチョコが欲しいと、もしかして自分にくれないかとほのかな期待を胸に鈴芽は談話室のあるフロアにたどり着いた。
「あ、来た来た」
談話室の中にいるかと思ったが、ソラは廊下にいた。背を預けて廊下に立ち、鈴芽を視界にとらえて開口一番に言う。
「チョコちょうだい」
鈴芽のなかの鈴見が笑った。大笑いだ。
「え、ソラ……チョコは?って、なんだその両手に抱えてる袋」
「チョコ。ウノ様とナイトとラカールとシャトナと勇人とシドレとレイカとミルミと」
「いや、もういい」
「あと街で見知らぬ女の子に複数」
「そ、れで……ソラは」
「女の子がオレのために頑張って作ってるところを想像しながら食べるととても美味しい」
「いや、だからソラは」
「ルイトもくれるかなって期待したら今晩までに作ってくれるってさ」
「あの、ソラ」
「あ、見知らぬ女の子たちの連絡先はその時に聞いといたからちゃんとホワイトデーには準備するよ」
「いやそうじゃなくて」
「でもさ。オレ鈴芽のチョコが一番欲しいんだよね。ねえ、チョコ持ってない?」
「あ、あの」
「ない?」
「……〜っ。じゃあ今から食べに行こう!」
「わーい」
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やまなしおちなしいみなし