ミックス | ナノ


▼ 嫌われ者


僕はひねくれ者だ。

嫌われる性格をしている。

それを自分でわかってるから、周りに好かれるために嘘ばかり吐いた。

嘘を吐けば友達ができた。

でも僕は嘘でできた友達がいても居心地が悪かった。

自分から友達を突き放した。

それから集団のなかでいつも端にいるようになった。

そう望んだ。

そしたら誰も僕を見なくなった。

悲しかった。

自分から望んだはずなのにね。

僕は僕の感情が馬鹿らしくて笑った。

嘲り笑った。

誰かに見てほしかった。

はしっこに僕はいるんだって。

生きてる心地がしないはしっこはつまらない。

友達になってほしいわけじゃない。

ただ、誰か。僕の存在を――。

そう願ったって、所詮は声に出さない悲鳴。

声に出してないんだ。

誰も気付かない。

叫んでやる対象もないしね。

だから僕は自分から存在することを示してやろうと思った。

僕ははしっこにいたんだ。

ちゃんといたんだ。

こんな醜い嫌われものの僕だけれども。

こんな青空の下で、さいごに叫んでやろうと思った。

声に出さないで、叫んでやろうと思った。

僕は存在したんだ!!



「好きです」



そう決意したとき、僕は告白された。



「……なに?聞こえないわ」



嘘だ。

たとえ相手がうつむいていたとしても、その言葉ははっきり僕に届いていた。



「好きです!」



そう言われたから僕は笑った。

静かに、唇を歪めたんだ。



「うれしいわ。私はそんな四文字のためだけに悩んでいたのね。その四文字が、短い文章が私は心の底から嬉しいわ」



嘘じゃない。

胸が躍り狂うほど嬉しい四文字だ。



「でも足りない……。私は嫌われものよ。強欲でもあるの」



ひねくれ者で、強欲。



「……それに、いまさら。駄目ね。私は人と関わるのが嫌いなのかもしれない。だから嫌な態度をとるのかもしれないわ」

「?」

「ねえ、私の存在を認めてよ!私はずっと、はしっこにいたの!その目に耳に鼻に肌に記憶に刻んでよ!私の存在を!最期を!」



そして僕は青空から離れた。

地面に近づいた。

広く澄みきった青空に笑いかけながら落ちた。