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▼ Reflection



緋里さまのsullenの続き。いつも通り勝手に!


















刺青が入った左腕を露にしながら、ワールは赤く晴れ上がったその腕を擦った。ベッドに座ってため息を吐き出すワールの隣でシドレも同じようにため息を漏らした。



「お前ら、ため息をつくと幸せが逃げるぞ」

「ため息はストレス解消の一貫であります。よって、幸せは逃げるのではなくむしろやって来るのでございますよ」

「知ってる。つかシドレ、そうとう疲れたんだな」

「はぁ。疲れましたよ。肉体的にも、精神的にも」



アイの殺風景な自室にシドレとアイとワールが集合していた。

つい数時間前にイヨがキレて発砲。場所が悪く部屋という狭い空間であり、なおかつ上司といい関係の客人である彼女に傷をつけることを躊躇ったシドレたちはその銃弾から防御することに徹していた。戦闘訓練は一応受けているものの非戦闘員であるアイは、イヨが発砲した直後に隣の部屋へ回避。そしてそのまま上司のツバサがやって来るまで立て籠る。
一方防御に徹した二人は、まるで客人だから傷つけられないのか、反撃する余裕がないのかどちらともいえない状況であった。シドレたちは前者のつもりであったが実際の状況ではどちらともとれないものだった。ワールに良眼能力や瞬間移動能力はないにしろ、もともと瞬発力がいいおかげでなんとか銃弾を避けたり刀やその鞘で弾いたりを繰り返す。シドレは自らの異脳である重力操作で銃弾の到達拒否をしていたが、途中からイヨがふたつあるうちのもう一方である『封印』の能力を使用し、シドレは強制的に仕込ませてある折り畳み式の槍を取り出して防御をするという体勢になった。
そんな状況に終了を運んできたのはミントからの報告で騒ぎを面白げに見に来たツバサだった。一先ずイヨを落ち着かせ、話を聞けばツバサが目を向けたのはイヨではなくシドレを含めた三人。イヨの前でツバサは三人の説教に入った。アイとワールには軽い注意ですんだもののシドレにはこってりと絞る。ちなみにツバサの軽い注意はワールの腕に赤い痣が出来るレベルだった。しかもシドレたち三人が大切にしている刺青が入ったところを的確に狙っている。彼女らにとって、それは説教以上に心を痛めた。

そして現在、イヨによって肉体的に疲れ、ツバサによって精神的に疲れた三人は会議を始めていた。



「謝りにいこうか」

「あ、謝りにって……。確かに悪いことをしたとは思いますが、それを機に私がなおるとは思いません」

「自分でちゃんとわかってんじゃねえかよ」

「わかってますよ!!……形だけなら、演技ならばいくらでも出来ますが、それは失礼でしょう」

「せめてもの侘びくらいしろよ」

「……そうですね。次からは夜這いっぽいのを止めます。普段の行動は修正できませんので、せめて睡眠は安静にさせるべきですよね。馴染み過ぎました」



下に向けたままのシドレの表情は汲み取れない。それでも長い付き合いのせいか、アイとワールには彼女の表情が容易に想像できた。
シドレは薄い色をした金の髪に絡めてある赤いリボンをほどくともう一度結び直した。



「俺たちも一緒に行くから、な」

「そうだな。シドレだけじゃ悪ぃし、俺らも一緒に行く」

「あ、ありがとうございます。しかし、アイとワールは」

「いいって、いいって。シドレは菓子作るの好きだよな。イヨさん菓子好きだから作ってもっていったらどうだ?菓子でつるわけじゃねぇけど、侘びに」

「俺とワールも手伝う。まあ、下手だけど道具の準備くらいは出来るだろ」



シドレが顔を上げた。幼い頃が泣き上戸だったせいか、その目はいつも以上に潤っている。今はアイとワールだけに見せる泣き顔を作り出し、シドレはアイの手を掴んだまま隣のワールの胸へとびこんだ。



「やっぱり二人が一番大好きだ……!」







━━━━………‥‥・・


続きは緋里さまにパス!






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