▼ 相互リンク感謝!
「今日は涼もあの双子もうちに居ないわ。今のうちにやっておくわよ!相互記念相互感謝の小説を!拳を天井に挙げなさい、理貴」
「お、おー……」
「気合いが入ってないわよ!!もう一回やってみなさい!」
控え目に横山陽香の家の居間で右手を挙げていた花岸理貴はため息を吐く。
陽香は腕組をして仁王立ちになり、こたつに入っていた理貴を見下ろしていたが理貴が「寒いだろうから座れよ」という言葉の言う通りにこたつの中へ入っていった。
「ったく、あんた主人公の癖に存在感薄いわよね」
「人が気にしていることを……。そもそも陽香が目立ちたがりというか唯我独尊というか、さ。俺は普通なわけ」
「あら。特徴がないと消されるわよ」
「誰に」
「管理人」
「……」
「そして私は理貴から主人公の座を奪う!」
「なんで!?」
ダンッと机を叩く。その衝撃で机の上に乗っていたみかんは揺れた。
「なんで、じゃないわよ。私が適任!あんたは私の相棒的なポジションになれはすべて解決よ」
「なにが解決するのかまったくわからないけどな」
「とっぺさまに私が主人公になったという報告をプレゼントするわ」
「いらねーよ!」
ふふん、と得意気に笑う陽香はみかんを手に取った。皮を剥き、実を食べる。その間どちらも話題をふることなく、無言だった。
陽香が肩にかかった髪を払ったとき、ふと何を思ったのか、突然立ち上がる。
「私、思ったわ。理貴が主人公らしくないのはあんたがヘタレだからよ!」
「は!?」
「だって武器が剣なのよ、理貴!剣ってなんか主人公っぽいじゃない!それに転校生!空から女の子は降らないけど私という女の子に振り回されたり、理貴を好きな子いるし、順応性が高い!」
「いや、陽香だって刀じゃん。それに順応性は高くない。反論する隙がなくて呆れてていつの間にか振り回されてるというか……。つか好きな子って?」
「刀じゃないわ、斬馬刀よ。好きな子については言ったらかわいそうでしょ」
理貴を指していた指は下ろされ、陽香は大人しく座った。
とくになにもすることはない。
陽香は「寒いんだから雪くらい降りなさいよね」と愚痴をもらす。
「とっぺさま、この度は相互を結んでくださりありがとうございます」
「は、陽香……!?」
「お礼よ。感謝よ。ほら、理貴も頭を下げなさい」
「どこに――いって!」
こたつの中に入った陽香の足が理貴の足を蹴り飛ばし、理貴は額を机にくっつけて悶える。陽香はそれを観念して頭をさげたと受け取り、追撃はしなかった。
「理貴、あちらのサイトさんの小説読んだ?」
「……王子がトリップした『魔女と王子と一般人のお話。』だけ」
「バカね。『物語修正業』も読みなさいよ!主人公の肩書きをもつ資格はないわね」
「陽香は読んだのかよ」
「もちろんよ。どっちも主人公らしくて理貴とは大違いだったわよ」
「ちょ、」
「……理貴」
「なんで無言で俺の両肩に手をおいて深刻そうに頷いた!?」
無言で、理貴の言う通り深刻そうな雰囲気と表情で頷く陽香はそれに対してなにも答えない。
その無言が精神的な攻撃となって理貴を貫く。
互いに唇も体も指も動かさないまま何分か静寂の時間を過ごした。音といえば家の前を通り越していく車と人の声。
理貴にはその長く重く感じだした沈黙を破る勇気はない。陽香も陽香で、何を思ってか微動にしていなかった。
「「ただ今帰りました」」
双子の重なった声に理貴は救いを求めるような気持ちでいっぱいになるが、実際に理貴と陽香のいる部屋に顔を出した双子は互いをみて頷くと何も言わずそのまま立ち去ってしまった。
「ちょ、お前ら……っ」
「バカね、理貴!とっぺさまに挨拶する時間が無駄になったわ!」
「今の沈黙ってそういう間かよ!?わっかりにくいな!」
「とっぺさま、相互してくれたことに感謝します!」
「おいおい、その台詞が書かれた紙は捨てろ!」
「こういうのは言えばいいのよ!」
「これ本人が読んでるんだぞ!?」
「潔く言った方がいいじゃない!」
「信用なくなるわ!」
「信用なんて後でどうにでもなるわよ!」
「お前もう喋るな!」
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相互リンクありがとうございます!感謝です!
完成が遅くてすみません。
よろしければお納めくださいませ!
それでは失礼します。