ミックス | ナノ


▼ 少年の意見

「幽霊なんて、馬鹿馬鹿しい」

「幽霊はいるよ」

「幽霊なんかいるわけない」

「彼らは僕たちをいつも見ている」



人の思想はそれぞれ。

「幽霊」というお題だけでたくさんの意見が出てくる。



『もう一度ご覧いただこう。この少年の背後にいる黒髪の女性は――』



「どうして幽霊ってみんな同じ格好をしているのかな。ほとんどの幽霊は女で、ほとんどは黒髪。前髪が長くて、いつも下を向いてる」



ふと、私の隣にいる少年が呟いた。この少年は近所に住んでいる子で、中学生の私とよく一緒に遊んでいる。この少年はまだ小学生。両親がお出掛けをしている今だけこの子を預かっているのだ。
はじめは近くの公園で遊んでいたのだけれどこの子が「昨日やってた恐怖のやつ見たい!」と言ったので私の家で少年の希望通り、昨夜放送されていた「怖い話」をみていた。



「紀子おねえちゃんはどう思う?」

「私?私は幽霊を信じてないからなー……。幽霊そのものが創作だと思うの。だからみんなおんなじ格好をしてるんじゃないかな?」

「そうかな?」

「きっとそうだよ」

「でもね――」



幽霊を信じてない、と言えば少年は眉を八の字にして下を向いたがすぐに立ち直った。私に無邪気な笑顔を向けて、少年らしい高い声で私に続きを言う。



「僕は幽霊を信じてる。幽霊でも普通の格好をしてるひとはいると思うんだ!つまりね、紀子おねえちゃんが気づいてないだけで駅にも店にも車の中にもご近所さんにもいるとおもうんだよ!」



少年が私の左手にそっと触れた。














































解説

この話の主人公は藤枝紀子です。藤枝紀子とは前作の「自殺懇願少女」もとい「二重人格少女」の過去話となります。藤枝紀子は前作で死んでします。私のミスでありませんが、前作では彼女は高校生でした。そんな彼女は、二重人格。その原因となったのが今回です。

今回は少年が幽霊で少女が気付かず過ごしています。近所に住んでいる少年なのに一度も名前で呼んでいないのは、知っているようで知らない存在だったからです。
彼女は少年が幽霊だと後に気が付き、それが原因で精神的に追い詰められるようになり、結果的に二重人格へ繋がることになります。

その「精神的に追い詰められる」はあなたのご想像におまかせいたします……。