ミックス | ナノ


▼ New course

「あ」

「お、イヨさんだ」

「イヨさん!」

「あ……ああ、シドレたちか……」

「なにもしないので聞いてください!聞いてほしいことがあるんです!」



イヨがツバサの元へ行くためのエレベーターに乗っていたら珍しく途中でのりこみがあった。基本的にエレベーターは途中で止まらないのがこの組織の建物だ。ならばどうやって止めるのか。それは自分の異能を使うしかない。異能がそれに対応していない者は階段。そうやって日常に訓練を仕込ませている。ちなみに案をだしたのは暗殺のボスであるウノだ。

自分の異能でいつも通りエレベーターを止めて乗り込もうとしたシドレはたまたまイヨと遭遇。そして一瞬で顔を明るくされた。隣にいるワールはとても苦い顔をしていて、アイはいつものようにサングラスをかけていて表情は捉えにくい。



「私、思うんです。イヨさん男体化させようって!生物学ならうちの組織に何人かいたと思うので、頼んでみようかと!」

「だ、だんた……?」

「昨日のギャップから私は新たなる同人誌を独自に製作してみたのですが、ナナリーさんから好評をいただきまして!あ、同人誌の販売をしたいんですが、よろしいでしょうか?」

「ど、どうじんしって……」

「イヨさんの男体化と師匠の同人誌!本人の許可がないと、ですからねー。ちなみに左が師匠で右がイヨさんなので安心してください!」

「シドレ?ちょっと」

「あ、イヨさんも読みます?このまえツバサさんや補佐の二人にも拝読させようとしたんですが断られて……。ナナリーさんに渡すとき必然的にいたリャク様にはさすがに恐れ多くてできませんでしたけどね。あ、師匠にも見せなくてはいけないですよね!はっ!同人誌は私の部屋にあるんでした!持ってくるので待っ……」



シドレの口が止まった。エレベーターが止まったのだ。ドアから姿を現したのは二人組。黒髪で長い女性と金髪の少女。少女ではなく実際は少年なのだが、なかなか男と判断できない顔立ちだった。



「げ、シドレじゃない!」

「うわ、今日は悪運だ」

「な、なんであなたたちが乗ろうとするんですか!今日に限って!!」



その男女とシドレはにらみ合い、最終的にその男女は音をたててエレベーターのドアを閉めた。



「悪いな、あいつらとシドレって仲が悪いんだよ」

「そうなのか」



シドレは腕を組みながらアイに彼らの愚痴を言っていて、もうイヨへの話題は打ち切っていた。

少ししてから目的の改装へ付く。ツバサの占領するフロアの、書斎前。四人はその書斎に入り、アイとイヨがシドレについてあれこれ言い、シドレはワールに目を配らせてから本棚へ。ワールは中央に居座るツバサの所へ行って用を済ませる。



「イっヨさん!この本見てくださいこの本!」



シドレが一冊の薄い本をイヨの所へ持っていく。
イヨは取り合えず手にとってみた。隣にいるアイの「シドレ、これは見せるなって何度も言っただろ」と軽く叱っている。

本の表紙は明るい色で統一されていて、二人の少年が描かれている。



「まずはキャグ寄りの同人誌です!私の師匠とイヨさん(男体化)をくっつける計画は地味に……、ふふ腐。
……そしてイヨさんが女の子のうちに私は何度も襲います」



最後に呟かれた言葉は誰にも聞かれないほど小さかった。

はずだった。

読唇術が使えるツバサは手に持っていた空のマグカップをシドレの頭に投げ、激突した。マグカップは条件反射でイヨがキャッチする。



「シドレって懲りないよね、本当にさ」



ツバサの側にいたワールはつい涙目を浮かべたシドレを心配して駆け寄りたい衝動に狩られたがなんとか持ちこたえた。ワールの変わりにアイがシドレの膨らんだ頭を見ながら背中を撫でて「後で氷貰ってくるか」と呟いた。



(まさかシドレが懲りないのってアイとワールのせいなんじゃ……)



イヨはその時だけ敵が増えた感覚になった。ツバサは引き出しから拳銃を出してシドレに笑顔で「ちょっと訓練室にいこうか。イヨはちょっと待っててね」と言う。
シドレを庇うアイとワールをみてやはりイヨはため息をついた。彼らが無自覚なのは分かっていながら。




━━━━………‥‥・・
緋里さんのrecoveryの後日談だったりもする。シドレが目覚めた。新たなる道を築いた

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