ミックス | ナノ


▼ 自殺懇願少女

本当に、弱肉強食だと思うな。
どこへ行っても。





私の名前は藤枝紀子。高校生。
今日も私は一人で昼食をとるの。いつも通り教室は嫌だから、いつも屋上へいく。今日は記念日なの。だから家に帰ったらご馳走を作るんだ。今日はご馳走を作ることで頭がいっぱい。作れたらっていう想像をするだけなんだけれどね、実際は。将来役にたたない勉強も、頭には一切入らない。

屋上へ流れる風が私の真っ黒な髪を通り抜け、制服の真っ赤なスカーフが髪と一緒に揺れた。
空になった弁当箱を片付けていく。
誰もいない屋上で私の弁当箱を片付ける音だけが響いて、それがちょっと楽しかった。

カラ

そんな音をたてて落ちたのは片付けた弁当箱だった。



(――まただ……)



いつもそう。突然左手が動かなくなる。そして包帯でぐるぐると巻かれた左手がガタガタと震えはじめ、人差し指をピンとたてたそれは、ぐっとコンクリートの地面に押し当てられる。
骨が折れてしまうような、そんな力なんだよ?痛いに決まってる。だから私は前回と同じく、絞り出したような声を喉から漏らしながら右手で左手を地面から剥がそうとしてみるけど、ちっとも変わらない。本当に自分の手なのか疑ってしまうくらいだった。


学校のチャイムがなる音が、私の耳を避けて鳴る。私は左手のことがあって授業を受けることができない。どうせ受ける気は無いんだけどね。



























「ねえ知ってる?この学校に出る幽霊の話!」

「えー、新学期早々いったい何?」

「もう、ちゃんと聞いてよ!」

「はいはい、それで?」

「屋上に出る幽霊の話だよ。左腕がない、旧制服をきた女の子!クラスの人たちに虐められて自殺しちゃったんだってー。左腕がないのは、クラスの男子に引っこ抜かれたせいなんだってさ」

「あ、知ってる知ってる!その子人格障害者だったから虐められたんだよね。本人無自覚で。それがどうかした?もうブーム過ぎたじゃん」

「それがさ、今年の夏休み入る前、二年の女子が左手血だらけで、骨がボキボキの状態で発見されたんだって!死因は――」









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