▼ Encounter
「あ、あれ?師匠?」
仕事関係で隣国に来ていたシドレとアイとワールはとある建物の屋上にいた。その屋上の真下は大通り。都会らしい高層ビルはなく、田舎より人で賑わっているその街の大通りに、シドレはふと見知った顔を見付けた気がした。だが、すぐに見失ってしまってシドレは気のせいだったのか、と首を傾げる。
「よし、設置したからもう宿に行って休もうぜー」
「あ、その前にお菓子買いたいです!」
「シドレお前、太るぞ。最近脚が……」
「あああああー!!聞ーこーえーなーいー!」
アイがサングラスの奥から呆れたような目を向けていたが、そんなことシドレは知らない。知ろうともしない。
「とにかくコンビニ探しましょう!宿近くの!アイ、お願いします」
「こんなのに使うための能力じゃないんだけどな、俺の異能」
「買った買ったー」
「シドレさんシドレさん、聞きたいことがあるんですが」
「なんですか?言ってみなさいワール君」
「菓子一個に対してなんなんだよこの漫画雑誌の量!」
シドレが持つコンビニ袋は四角に変形している。五冊の漫画雑誌に対してうま●棒が3つというのがそれの中身だ。少女漫画と少年漫画が入り交じったその袋はピンと張られていて袋が破れそうなことになっている。
宿に着き、アイがチェックインしている間にシドレは漫画を読み、ワールはシドレの隣で携帯電話を使ってボスの補佐に仕事の報告をしていた。
「シドレちゃん?」
「……へ?」
ふと話しかけられ、シドレは雑誌から顔を上げた。すると数メートル先にシドレの見知った顔があった。
「し、師匠!どうし……あ、『仕事』ですか?」
「まー……そんなとこ」
シドレに近寄りながら一人でいるのは日暗。シドレがつい最近「師匠」と呼ぶようになった変態仲間――ではなく変人仲間――……でもなく、とても趣味が合う仲だ。
ワールはシドレと日暗を見比べて(変な話題を始めたら居づらいな……俺)と思った。
「きゃああああああ!来ないでください師匠ぉぉぉぉぉぉおお」
「俺に近づけなくてそこの少年にベッタリってどういうことだよ!?不公平!」
「公平です公平ですうわあああああああああああああああ!」
大声で走り回るシドレを日暗が追い掛ける。異能を使う余裕もないほど切羽詰まったシドレは最終的に報告をしていたワールをも巻き込み始めるが、日暗よりも早く体力がきれたシドレが床に倒れ込むとさすがに傍観していたワールも日暗にやめてもらうように説得にはいる。説得の際にワールが言った「男に対するトラウマ」が日暗は気になったが追求はしなかった。
「俺、生きて帰れたら……イヨさんの胸を揉むんだ……!」
死亡フラグを立ててシドレは死んだフリをした。
━━━………‥‥・・
なんだこれ。オチない上どうでもいい……