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▼ 物語の復讐

物語のキャラクターたちは著者の"シナリオ"通りにしか動けない。

彼らが生きるも死ぬも、著者のペン次第だ。

著者のちょっとした閃きを種にキャラクターは成長していく。

月日を重ね、やっと出来たキャラクター。

著者が彼らに命を吹き込む。



「ねえ、私は人形じゃないんだよ」

「命を与えられた僕たちは」

「意志をもつ」



キャラクターは楽しそうに演技をする。



時には釘で心臓を打たれ

時には足を切り落とし

時には熱い鉄靴で踊り

時には泡になって死に

時には町から消え去り

時には狼に食べられる



それでも彼らは笑う。

無邪気な人間の為にその身を捧げる。

だが、思ってしまった。

とある一人のキャラクターは思ってしまった。



「俺は何のために存在しているんだろう」



演技をすることは自分にとって幸せなことなのか

無邪気な人間を喜ばせることだけに存在しているのか。

考えた末、彼は願った。



自由になりたい



と。

彼だけだった。そう思ったのは。

他のキャラクターたちは今に満足していた。

けれど彼だけは違ったのだ。

それから彼のシナリオから逃げる生き方が始まる。

物語から出た時、彼は何をするのだろう。

著者を殺して完全な自由を手にする?

自由を求めるなら規則も破らなくてはならない。

終わりのない連鎖は、ここから始まるのだ。







お前の為に生きるんじゃない。
これからは自分のために生きてやる。
"シナリオ"から抜け出すんだ!



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