▼ Shower
「鈴芽」
「ん?」
「汗の臭いするけど、なんで?」
ソラの部屋に設置された和室で扇風機を回しながらソラはテーブルに肘をついた。刀の手入れをしていた右手で自らの頭を支えている。
「なんでって、暑いし外。この街に通る汽車に乗り遅れそうになって走ったから」
ソラと同じように肘をつく鈴芽は目を上の方に泳がして当時を思い出しながら言った。ソラはあまり興味を示さなかったのか「ふーん」と言ってまた刀の手入れに戻った。
鈴芽は「俺そんなに汗臭いか?」と自分の臭いを嗅いでいた。
手入れをしていたソラはふとその手をやめて道具を片付けていく。
「?」
「ちょっと動かないでよ?」
道具を片付けたソラはゆっくり鈴芽に近付いていく。膝をついて座る鈴芽と同じ目線になって、その両手を鈴芽の両肩に乗せた。
「?……?」
何をするつもりなのかわからない鈴芽は取り合えずソラがなにをするのか見守ることにした。
「っ!?」
「……しょっぱ」
ソラは鈴芽の首筋を舐めて小さく呟いた。
驚く鈴芽を置いてソラは立ち上がり、鈴芽の手を引っ張った。
「シャワー浴びておいで、待ってるから」
「は?いや、ちょ、ソラ?」
「何?……もしかしてオレがいないとシャワーできない?」
「ばっ、違ぇ!じゃあ借りるからな」
「どうぞ」
背中を向けて遠ざかる鈴芽にソラは「シャワー浴びてる間に服とっちゃお」と小さく、自分にも聞こえない程の声で呟いた。