私が目を覚ましたとき、すでに状況はわけのわからないことになっていた。私が意識を失っている間になにが起きたのか全く、検討もつかない。



「えっと、私と智雅くんの中が入れ替わったってこと?」

「そういうことだよ! 迷惑だよ、まったく。この世界は一体なんなんだっつの。キスしたら精神をどうにかできるってこと!?」



私の肉体で智雅くん(私)はあぐらをかいて頭を抑えていた。私(智雅くん)から生える綺麗な金髪を気にしつつ、困ったね、と言い合う。



「お前らがまた接吻すれば済む話だろ」

「あ、あの、簡単に言うけど、私は、そういうの、初めてなんだよ!? 智雅くんと、そんな……っ」

「今の葵ちゃんは俺だけどね。姿形なら自分で自分に……って、なんかさみしいね。どうにかできないかなあ」

「不便と引き替えにするくらい別に構わんだろうが」

「むりむりむりむり!」

「俺は別にいいんだけどね。キスなんて挨拶みたいなもんだし。……けど、葵ちゃんがこの様子だと……」

「まあ処女にしかできん反応だな。……面倒な」



山田さんはいいよね、何も不便じゃないんだから! ああもう、これからどうしよう、異性の智雅くんの体だよ!? トイレとかお風呂とかどうすればいいの! 他人の体にいるせいか、なんだか胸あたりが気持ち悪いし……。早く戻りたいけどキスなんて出来ない! 絶対! だ、だって智雅くんはいくら旅仲間でもそういう目でみたことないし、そういう意味で好きではない。智雅くんに失礼だよ! ていうか私の初めてなんだから! さっきのリーダーの女性にされた不慮の事故は記憶から抹消!



「このままだと世渡りの力が無事に使えるかわからんぞ、ガキども」



じっと智雅くん(私)は私の手を神妙な顔で見ていた。な、なんだろう、私の体ってなにか変だったりするのかな……。



「葵ちゃん、俺の手袋脱がないでね。びっくりするから」

「えっ? 了解……」

「それにしても異能はこっちに付いてきてくれて良かったよ。葵ちゃんのトリップ体質が体か魂のどっちについているのか分からないから不安は拭えないけどね。ねえ、方法を探すためにとりあえず町を目指さない?」

「町?」

「ほら、山田が見たってやつ。この世界の人に状況をどうにかする状況を聞き出そうよ」

「うん、そうだね」



私(智雅くんの)は手を見てみる。いつも手袋で覆われている手。なんでだろう、とは思ってたけど何か意味があるみたい。いやいや、そんなことより私と智雅くんの状況をだね……。



「山田、方角はどっち?」

「北西だ」

「よおーし、出発!」

「元気いいね、智雅くん……」