自分のことを棚に上げすぎじゃないか。
看守が囚人にしてきた今までの所行こそ悪魔に相応しい。


「他の役員に連絡しろ! こんな化け物、手に負えん!」

「化け物なんて……。判断するの早いんじゃないの? オネーサン」


智雅くんが飛び上がった。逃げようとした看守たちを撃ち抜く。宙に浮いている一瞬の間にどうしたのか、見事に撃ち、そしてそのまま看守の群れに飛び込んでいった。
乱射、乱闘。
ニヤリと口元を歪めたまま智雅くんは看守を一掃する。
私に向かってくる看守は私が殺し、山田さんは壁に寄りかかりながら燃え尽きた煙草と煙管を持ち換える。


「早よう処女を捕まえんか」

「処女わっかんないから自分でやってよ山田」

「そこの女、処女だ」

「あっ、やべ。ごめん。殺っちゃった。生け捕りできそうにないや!」

「不老不死の肉の味はどの様なものか……」

「俺、そんなんじゃビビらないよ。Redo!」


智雅くんと山田さんは余裕があるようで雑談をしている。
ほとんど智雅くんのおかげで私たちは看守たちを皆殺しにした。山田さんが出来立ての屍を漁って処女と思われる看守をムシャムシャバキバキ食べていた。いっきに濃厚になる血の香り。口を着物を真っ赤にしながら山田さんは満足げに食べている。ときどき生け捕りしなかった私たちに悪態を吐いていた。神に屍を食わせるとは、だとか、新鮮味に欠ける、だとか。


「智雅くん、看守ってまだ来るよね」

「そりゃあね。だってここ、武器庫なわけだし。葵ちゃん疲れた? 大丈夫? あ、怪我したんだったら治してあげるよ!」

「怪我は小さいから大丈夫なんだけど……。少し疲れちゃって」

「じゃあ次は休んでなよ! 俺が片付けとくからさ」


智雅くんは私に寄ってくると手や足などの具合をテキパキと見て、怪我の確認をした。擦り傷や痣しか負っていないのだが、それでも手早く治してくれる。


「ごめん。休むつもりで言ったわけじゃ……」

「大丈夫大丈夫。分かってるよ。でも休んでていいんだよ。ね」

「ううん。まだ殺せる」

「ならいいんだけど」


それから何時間も経過した。何人も殺して、何度も傷をうんだ。
やがて武器庫を訪れる看守の数も減り、気が付けばただただ暇をもて余すようになっていた。智雅くんに私の殺し方について修正を学び、さらにアドバイスを貰うほどの余裕がある。山田さんにいたっては、どうやって血を拭いたのか、口も着物も血の跡などない状態になっており、煙管を片手に屍を物色していた。


「葵!」


そうしていると、あの隻眼双子が武器庫の前に現れ、手招きをした。