レベルオーの一員は入れ替わり立ち替わり武器庫を訪れては去っていった。智雅と山田は旅の最中に持ち歩く学生鞄から新しい衣服を取り出して着替えを済ます。一体どこから学生鞄が出てきたものか、いままでどこにあったのかは私の知る所ではない。基本的に智雅くんが管理しているのだ。
私も着なれた制服に着替え、体を動かしやすいように準備運動をしておく。


「ああ、もう。制服がもうないよ」

「葵ちゃんのその黒い制服、もうそれだけ?」

「次傷付けたらまた別の制服を引っ張り出さないと。……裁縫道具の糸ってまだあるかな」

「黒い糸は少ないかも。新調しなきゃだね」

「おいガキども。看守が来るぞ」


刺繍の入った着物を完璧に着こなし、山田さんはこちらに冷ややかな視線を届ける。
智雅くんは拳銃の銃弾を装填。私は手首をならす。よし。これでも一人で戦闘訓練は積み上げてきたのだ。私一人でも戦える自信をつけなくては。


「サポートするからね。葵ちゃん、無理をしないでね」

「ありがとう智雅くん。助かるよ」


複数の慌ただしい足跡。
山田さんの吐いた毒のような煙が辺り一体に充満する。


「処女は俺にまわせよ」

「そんなの、一目だけでは分からないよ」


それが号令。
廊下の先から看守が姿を現す。初めの一撃は好戦的な智雅くんだった。普通は両手で支えなければならない大口径の拳銃をそよ風でも吹くような気軽さをもって、片手で撃つ。
先頭にいた看守の頭が爆発した。「小娘、よく見ろよ。あれは童貞だ」「……よく見たってわかんないって」得意気に山田さんは私の肩を叩いた。


「ちなみに処女は生け捕りにしろよな」

「だから私にはできないよ。もう」

「使えない小娘なら食うぞ。ちょうどお前も処女だしな」


山田さんはそう言うと私を看守たちにつき出した。
ちょ、ちょっと! 大勢の前で堂々とそういうことを言わないでほしい! ていうか理不尽だよ山田さん!
横目で私たちの様子を見ていた智雅くんは苦笑していた。後方の看守が血を吹いて倒れる。油断している私へ鞭を振り上げる看守を避けて足を引っかけると盛大に転がった。転がった看守に智雅くんは攻撃を仕掛ける。弾ける内臓。飛び散る肉塊。

一人の看守が取り乱した。
初めて人の中を見たのだろう。頬に飛んできた肝臓の一部に泣き震え、叫ぶ。仲間の看守が止めようとしたが聞かず、隙だらけの安定しない走りで私へ近付く。私は彼の原始的で筋のないパンチを受け流し、ちょうど鎖骨の中央、骨の真上に親指を突き立てた。
刺突が看守に大ダメージを与える。看守は唐突に息ができなくなり、床に転がった。転がった看守の上を跨がると私は彼の頭を両手で持ち、捻り、首の骨をバキリと折った。


「あっ、悪魔……!」


看守の誰かが震えた声で言った。