私は眼帯の兄に連れられて、智雅くんと山田さんは眼帯の弟に連れられて食堂を訪れた。五人そろって同じテーブルで食事に手をつける。


「山田さん、食べないのですか?」


眼帯の弟が食事にまったく手をつけない山田を疑問に思って首を傾げた。山田さんはギロリとした目付きで「こんなもの食えるか」と言い捨てる。まあ、たしかに山田さんの腹を満たしているのは人間だけど。山田さんが最後に人間を食べたのっていつだっけ。山賊に襲われた時からずっと食べていないんだっけ?


「俺は食わねえからやるよ」


それは優しさ故の発言とはほど遠く、ゴミを棄てるような言い方だった。豊作の神とは対極に位置する災害の神だから食べ物を大切にしない態度はわかるけど……。


「じゃ、俺と山田の分の食事を三人で分けちゃってよ」


山田さんとは逆の、優しさで出来た声が智雅くんの方からとんできた。「食べなくったって死なないから」と智雅くんは言うが、いくら不老不死でも空腹は感じているはずだ。そんな自己犠牲は受け取れない。


「ではありがたく頂戴します」

「二人とも、ありがとうございます!」


遠慮なく、いや容赦なく隻眼双子の兄弟は智雅くんと山田さんの食事を私と自分達に分配していった。戸惑う私を置いてきぼりにしてそさくさと隻眼双子ほ食事を開始した。山田さんはともかく智雅くんに申し訳ない。


「彼なら心配いりませんよ。空腹を紛らわす手段はあるんですし」

「ええ。空腹程度で死ぬほど智雅は柔ではありません」


私は眼帯の兄と眼帯の弟に促され、後ろ髪引かれる思いで食事に手をつけた。……うん? あれ? この隻眼双子、まるで智雅くんのことをよく知っているかのような言いぶりではなかったか? 今日初対面のはずなのに。
首を傾げてスープを一口。美味しくない。


「あの、失礼だけどあなたたちはどんな罪を犯したの?」

「殺人のようなものです。あなたたちはどうですか」

「同じような感じ」


本当は成り行きで監獄島へ来てしまっただけなのだが、あながち間違っていない。人を殺したことがまちがっていることはないと思うが。私たちが生きるためには死んでもらうしかなかったのだ。そこに罪の意識などはなく、仕方のないことだと割り切っている。はじめの方は私も殺人を犯した罪に苦しんだりしたんだけど。


「リーダー! さっそく新人の手下を率いれたんスか!」


私と眼帯の兄、弟と食事をしていると、複数の男女グループが近寄ってきた。話し掛けられた眼帯の兄は「違いますよ」と断っている。……なんのことだろうか。リーダーって?