あいつら絶対に殺してやる。そんな目付きの智雅くんと共に、船は目的地に到着した様だった。奴隷のような扱いを受けて辿り着いたのは監獄島という、一つの島が監獄となった場所だった。まともな説明もなく独房を割り当てられたが、要は私たちは重大な罪を犯した極悪人らしい。ただの監獄、つまり刑務所ではどうにもできない重罪人が世界各国から集められて収容されるようだった。

四畳程度しかない狭い独房を割り当てられる。私と智雅くん、山田さんの独房の位置はバラバラだったものの、この監獄は男女混合ということが僅かな救いだった。だって普通は男女を分けるじゃない。厳重に。そんなのよりましだ。バラバラではトリップするときに困る。
ちなみに私たちを鞭で叩いていた仮面の人たちは看守らしい。


「こんにちは」


さっそく独房に入れられた私がため息を出して落ち込んでいると、隣の独房から話し掛ける声がした。となりの独房との間には鉄格子の小さな窓がある。その向こうから声がしたのだ。なんだなんだと覗いてみると、そこにら綺麗な銀髪をした少年がいた。
私より少し年上に見える彼はとても落ち着いた様子だった。左目を布で覆い隠している。あれは簡素な眼帯だろうか。吸い込まれそうな蒼い瞳がこちらを向いている。


「今年もたくさん収容されましたね。あなたは今日来た人ですね」

「あ、うん」

「僕も双子の弟と共に収容されているのですが、独房は適当に決められているので遠いんです。ここは罪人を更生させることを目的にしていますが、実際は奴隷のように働かされています。女性でも容赦はありません。気を付けてくださいね」

「教えてくれてありがとう」

「いえいえ。また夕食の時間にお話しましょう」


夕食……? 外なんてまったく見る機会はなかったけど、今は夕方なのだろうか。
独房に放り込まれてしばらくしたのち、仮面の人――看守たちに引っ張られるように食堂に到着した。私の隣には隣室の眼帯の兄がいる。間近で見て分かったが、私の布切れよりよっぽどいい囚人服を着ている。聞けば、どうやら労働の功績によって身の回りに変化があるのだそうだ。


「いつも僕と弟はこの席で食べています。よかったら葵も一緒にどうぞ」

「食堂では席とか決められていないの?」

「そうですね。ここは数少ない自由です。ほら、僕たちが私語をしていても看守は鞭を振るわないでしょう」

「あー。そういえば」


食堂にはすでにたくさんの囚人と、テーブルに並べられた簡素な食事があった。夕食のメニューはパンとスープらしい。量は少ない。……これ、山田さん食べられるのかな。
眼帯の兄は弟を待っているのか食事に手をつけない。私もなにもせず待っていると、食事を催促されたが断った。我慢している人の正面で食べるわけにはいかない。


「兄さん」

「ああ、来ましたか」


眼帯の兄より少し高めの声が彼を呼んだ。私と眼帯の兄が目を向けると、そこには銀髪で眼帯の……、眼帯の兄と瓜二つの少年が笑顔を浮かべて立っていた。身長に多少の誤差はあれど、目付き、体型、骨格、髪型、声質、顔つき……。ほとんどのパーツがまるでコピーしたかのようにまったく同一だった。違う部分といえば眼帯の位置が逆というくらい。


「やあ葵ちゃん! さっきぶり!」

「……」


眼帯の弟の後ろから智雅くんと山田さんが姿を現した。
山田さんはテーブルの上の食事を見て怪訝な表情を隠しもしていなかった。