「フン。新入りか」「なんだその服は!」「この悪人が!」「さっさと言う通りに動け労働者よ!」
トリップ早々、そこは知らない船の上。顔を奇妙な仮面で覆った人たちに取り抑えられた。私も智雅くんも山田さんも、手錠を掛けられ、船の奥に引きずり込まれる。今にも暴れだしそうな山田さんを智雅くんと静かに宥め、そして連れてこられた場所はあまりに異様で、そしてそこは私がよく知る空間に似ていた。


「うわぁ……」


智雅くんがつぶやいた。
一般家庭の敷地分の広さはある大きな部屋に敷き詰めるように押し込められた人達。悪い人相をしていたり、絶望していたり、虚ろな目をしていたり。
私の頭に思い浮かんだのは奴隷という文字。私が記憶する奴隷たち、人身売買を受ける者たちとおなじ表情をしていた。


「山田さん、何があっても暴れたりしないでね」

「そそ。トリップした異世界に深く関わらないのが俺たちの決まりなんだから」

「俺の世界では俺をこんな目に合わせてくれたような奴等の言うセリフとは思えんな」

「山田さん、あれは不可抗力だよ」


私たちがボソボソと話をしていると「私語をするな、極悪人が!」と、仮面の人に鞭で叩かれた。容赦なく背中にやられた。焼けるように痛い……。
私たち三人は、後からやって来た仮面の人に汚ない布を渡された。なんだこれは。


「そんな服を着ているな。囚人服に着替えろ。ここで」


は……? 囚人服? え、着替えるの? ここで? みんな見てますけど……?


「あの、質問いいですか?」

「口答えするな。言う通りにやれ!」


バチン。また鞭。今度は腕だ。
突如、私を二度も鞭で叩いていた仮面の人が倒れた。鈍い声を漏らして倒れたきり動かなくなる。倒れた衝撃で仮面が外れる。その人は口から大量の血を吐いて死んでいた。
突然倒れて突然死んだ仮面の人。同じ部屋にいた複数の同じ仮面の人たちが慌てて倒れた彼に寄る。私は背後から強い殺気を感じていた。恐る恐る見上げれば、そこには目線だけで人を殺しそうな厄介な神がいらっしゃった。山田さんが何かしたことは明白だった。

結局、私たち三人はたくさんの人が見ているなか、下着になって着替えることとなった。耳まで、隙間なく真っ赤に赤面する私を智雅くんと図体の大きな山田さんが隠してくれたことが唯一ありがたいことだった。
ボロボロの布切れである服を着せられたあと、手枷と足枷をつけられて、私たちは三人とも仮面の人たちが監視するこの部屋にそのまま押し込められることとなった。
ちなみに、脱いだ服は目の前で窓から海に捨てられた。しかも獲物である拳銃を持っていた智雅くんは何度も何度も鞭で叩かれてしまっていた。