その国は、数年前まで恐怖に支配されていた。たった一つの生物によって。たった一つの伝説によって。たった一つの神によって。たった一つの怪物によって。たった一つの災害によって。
生け贄を捧げろ。
さもなければこの国は蹂躙され、滅ぶ。
酒を、女を、食料を、宝を。
この前、東のくにが滅んだ。
昨日、南東のくにが滅んだ。
国のなかのくにがつき次に滅ぼされていく。
そのなかで立ち上がったのはスサノオという一人の青年。
彼は一人で一つの生物を伝説を神を怪物を災害を倒した。
たくさんの時間を掛けて。たくさんの怪我を負って。
そうして恐怖は立ち去ったかのように――思えた。
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